「不知火くん!」

背後から声をかけられて、反射的に振り返る。
そこには、初日のスーツタイプの制服とは違い胸にホテルのロゴが刺繍されたポロシャツとショートパンツを着た優の姿。

「良かった、休憩中に見つけられて」

「何か俺に用事でもあんのか?」

「うん。これ、金久保くんに返しておいてもらえる?」

優が差し出したのは、白い紙袋に入ったタオル。
そういや昨日誉が貸してたっけか。

「金久保くんに直接返した方がいいと思ったんだけど、なかなか見つけらんなくて」

「で、俺に回ってきたわけか」

誉の代理ってのは若干納得いかないが、優から話しかけてくれたのでまあ良しとする。

「じゃあ、そういうことで。よろしくね」

「あ、ちょっと待て!」

「?なに?」

「昨日聞きそびれてた。今週の休みっていつだ?」

聞こうとした瞬間に翼に水をかけられて、すっかり忘れていたのを思い出したのは今朝のこと。
広い敷地内で探すのはさすがに骨が折れる、この機会を逃すわけにはいかない。

「今週はー…明日が休み。あとは明後日が中番でその次が早番、君達の最終日が遅番だったかな」

「そうか…とりあえず明日の予定空いてるか?」

「うん、まあ。特には」

クーラーかけてゴロゴロしようと思ってた、なんて優には苦笑い。

「じゃあ決まりだな。明日の優の一日、俺にくれよ」

「え、」

「どうせ暇なんだろ?どっかにデート…とはいかないが、一緒に遊ぼうぜ」

デート、という単語を出すと、優は少し頬を染める(なんだその可愛い反応、期待したくなるだろ)
少し迷うような素振りを見せた後、優はちらりと俺を見上げた。

「…楽しませてくれるんでしょうね?」

「!当然だろ?最高の一日にしてやるよ」

言い切れば、優は俺の胸に軽く拳をぶつけて口角を上げる。

「期待してる!じゃあね、そろそろ休憩終わるから」

去り際に見せた不意打ちの笑顔、俺は数秒固まった後に誰が見ている訳でもないのに顔を隠してしゃがみ込んだ。

「なんだよあれ…反則だろ…」

熱くなった頬は、きっと赤く染まっているだろう。
優の頬も同じように染まっていることなんか、今の俺には知る由も無かった。





向日葵よりも輝く笑顔





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