「行ってらっしゃいませ!」

大学一年の夏休み、あり余る暇を有効活用するために始めたリゾートバイト。
海沿いにある高級ホテル、きれいで広いプールは見ているだけで心が弾む。
休日と勤務後は従業員も利用してもいいとなれば、それはもうモチベーションも上がるってわけで。
今日もあたしは元気に仕事に励んでいた。

「おはよう、小林さん」

「あ、オーナー。おはようございます!」

カツン、とヒールを鳴らしてエントランスに現れたのは、このホテルのオーナーの星月琥春さん。
はあ…相変わらずお美しい。

「前にも話したけど、今日から一週間うちの学園の生徒達の夏期研修が入るわ。彼らの対応お願いね」

「はいっ」

「修学旅行みたいなものだし、基本的な対応はいつもと変わらないけど…歳が近いからってくだけすぎないようにね」

そう言って綺麗に口角を上げたオーナーは、あたしの耳元に顔を寄せる。

「まあ、勤務時間以外は自由だけど。せっかくだから、彼氏でも見付けたら?将来有望株ばかりよ」

「っ、オーナー!?」

「うふふ、今日も頑張ってね!」

とてもいい笑顔で手を振り去っていくオーナー。
あの人はあの言動さえ無ければパーフェクト美女なのに…もったいない。

「…っと、いけない!お迎えの準備!」

到着予定時刻は迫っている、呆けている暇は無いのだ。
あたしは急いでルームキーや館内マップの準備を始めた。
…そして、

「星月学園の皆様ですね。お待ちしておりました」

この瞬間、濃い、と一言では言えないくらいの一週間が始まったことに、あたしはまだ気付いていなかった。










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