…えーと。
ジャージに着替えて更衣室を出て、神話科の応援席に戻ろうとしていたあたしは、月子に「一緒にお昼を食べよう」と誘われた。
錫也がたくさんお弁当を作ったらしいので、あたしは遠慮なくお呼ばれした。
月子に連れられて中庭に来てみると、そこには。

「みんな遠慮しないで食べてくれよ?」

「僕までお邪魔してすみません」

「気にすんなよ青空。この量だぜ?」

「うわ、うまそー…」

「お、戻ってきたな夜久」

「どうした小林、座らないのか」

「あ、いや…」

見事なまでに、オールスター集合してました。

「どうしたの、優ちゃん」

「…すごい人数だね」

場所を空けてくれた錫也の隣に腰を下ろしながら、ぽつりと呟く。

「多めに作っておいて良かったよ。こんなに大人数になるとは思わなかったけどさ」

取り皿に盛ったおかずをあたしに差し出しながら、錫也はどこか嬉しそうだ。

「本当は先輩達も誘おうと思ってたんだけど、一樹会長も部長も忙しそうだったから」

ごめんね、と月子に囁かれ、意識せずとも頬が染まるのがわかる。

「どうしたんだ、小林。顔赤いぞ?」

「なっ、なんでもないよ!いただきますっ」

白鳥に指摘されて、慌てて取り繕うようにお弁当に手をつける。
あ、この卵焼き美味しい…さすが錫也。

「優、唐揚げも食べるか?」

「うん、ありがと」

わいわいと雑談しながら食べていたら、いつの間にかあれだけあったお弁当はほとんど無くなっていた。
男子高校生の食欲って凄い。

「なぁ錫也、デザートねーの?」

「そう言うと思って、ちゃんと作ってきました」

「やりぃ!」

錫也と哉太の会話は、最早親子だ。
デザートと聞いて、宮地も目を輝かせている。

「今日のデザートは、オレンジのムースとりんごのゼリー。お好きな方をどうぞ」

周りが次々と手を伸ばす中、あたしは悩んでいた。

「小林、食わないのか?」

「…どっちにしようかと思ってさ。どっちも美味しそうだから」

真剣に迷っていると、錫也があたしの前にムースとゼリーを並べた。

「錫也?」

「どっちも食べればいいよ」

「え、でも…」

「応援合戦頑張ってたから、俺からのご褒美。な?」

にっこりと錫也スマイル付きでスプーンを渡される。

「…じゃあ、いただきます」

「はい、召し上がれ」






(…なんか錫也、優に甘くね?)
(確かに応援合戦は頑張っていたと思うがな)
(天文科のオカン、てのとはちょっと違うよなー)





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