![](//img.mobilerz.net/sozai/1299_w.gif)
…えーと。
ジャージに着替えて更衣室を出て、神話科の応援席に戻ろうとしていたあたしは、月子に「一緒にお昼を食べよう」と誘われた。
錫也がたくさんお弁当を作ったらしいので、あたしは遠慮なくお呼ばれした。
月子に連れられて中庭に来てみると、そこには。
「みんな遠慮しないで食べてくれよ?」
「僕までお邪魔してすみません」
「気にすんなよ青空。この量だぜ?」
「うわ、うまそー…」
「お、戻ってきたな夜久」
「どうした小林、座らないのか」
「あ、いや…」
見事なまでに、オールスター集合してました。
「どうしたの、優ちゃん」
「…すごい人数だね」
場所を空けてくれた錫也の隣に腰を下ろしながら、ぽつりと呟く。
「多めに作っておいて良かったよ。こんなに大人数になるとは思わなかったけどさ」
取り皿に盛ったおかずをあたしに差し出しながら、錫也はどこか嬉しそうだ。
「本当は先輩達も誘おうと思ってたんだけど、一樹会長も部長も忙しそうだったから」
ごめんね、と月子に囁かれ、意識せずとも頬が染まるのがわかる。
「どうしたんだ、小林。顔赤いぞ?」
「なっ、なんでもないよ!いただきますっ」
白鳥に指摘されて、慌てて取り繕うようにお弁当に手をつける。
あ、この卵焼き美味しい…さすが錫也。
「優、唐揚げも食べるか?」
「うん、ありがと」
わいわいと雑談しながら食べていたら、いつの間にかあれだけあったお弁当はほとんど無くなっていた。
男子高校生の食欲って凄い。
「なぁ錫也、デザートねーの?」
「そう言うと思って、ちゃんと作ってきました」
「やりぃ!」
錫也と哉太の会話は、最早親子だ。
デザートと聞いて、宮地も目を輝かせている。
「今日のデザートは、オレンジのムースとりんごのゼリー。お好きな方をどうぞ」
周りが次々と手を伸ばす中、あたしは悩んでいた。
「小林、食わないのか?」
「…どっちにしようかと思ってさ。どっちも美味しそうだから」
真剣に迷っていると、錫也があたしの前にムースとゼリーを並べた。
「錫也?」
「どっちも食べればいいよ」
「え、でも…」
「応援合戦頑張ってたから、俺からのご褒美。な?」
にっこりと錫也スマイル付きでスプーンを渡される。
「…じゃあ、いただきます」
「はい、召し上がれ」
(…なんか錫也、優に甘くね?)
(確かに応援合戦は頑張っていたと思うがな)
(天文科のオカン、てのとはちょっと違うよなー)
→back