振り付けまで完璧に(相当練習したからね)歌いきったあたしは、すっかりやりきった気持ちでグラウンドを後にした。
しかし練習で何度も見てたとはいえ、ごつい男子高校生が『キラッ☆』とかやってるのは…笑える…。
「優、お疲れ」
「お疲れさん。まさか歌うとは思わなかったぜ」
「錫也!哉太!」
更衣室に行こうと天文科の後ろを歩いていたところで、錫也と哉太に声をかけられる。
ぱたぱたと駆け寄ったあたしの頭を、よく頑張ったな、と錫也が撫でた。
「さすが神話科のお姫様。可愛かったよ」
「お世辞でもありがと、錫也」
「…お世辞じゃないんだけどなぁ」
苦笑する錫也の隣でデジカメを弄っていた哉太が、ニヤリと笑ってあたしに画面を見せる。
「見るか?なかなかよく撮れたぜ」
「………まさか」
哉太の手からデジカメを奪い取り、データを再生していく。
そこには、案の定チアガール姿で歌うあたしの姿。
他にも、月子や錫也の写真。
…それと、
「…哉太、これ、」
あたしの目に飛び込んできたのは、競技中の一樹会長。
相変わらずの強気な笑みが、そこにはしっかりと記録されていた。
「やばい、カッコイイ…!」
「だろ!?さすがだぜ不知火会長…!」
「俺がどうかしたか?」
背後から聞こえた声にびくりと肩が跳ねる。
暴れる心臓をなんとか落ち着かせながら振り向けば、渦中の人物の姿。
「かっ、ずき、先輩…!」
「どうした小林、そんなに驚いて。俺に言えないような話か?」
「いえ…そういうわけじゃないですけど、」
あなたのカッコ良さについて話してました、なんて、とてもじゃないけど言えなくて。
哉太に助けを求める視線を送れば、キラキラとした瞳で一樹先輩に寄っていく。
「不知火会長、さっきの競技、すっげーカッコ良かったッス!!」
「おう、ありがとな七海。ちゃんと写真に収めてあるだろうな?」
「はい!」
「……あたし、着替えてきまーす…」
今のうちに逃げてしまおう。
二人に小さく声をかけて、あたしはそそくさと更衣室に向かったのだった。
(で、頼んでたのはちゃんと撮ってくれただろうな?)
(ッス。でも、なんで小林のチアガール姿なんて?)
(本部テントにいると、後ろ姿しか見えねぇんだよ…)
(はぁ…。でも、俺より白銀先輩の方が上手く撮れると思うんすけど)
(桜士郎に言ったらあれこれ詮索されるに決まってるからな)
(…なるほど)
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