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「じゃあ、俺は生徒会室に寄ってくから。誉、悪いが優を教室まで送ってってやってくれ」
「え、」
「わかった、任せて」
あたしが驚いている間に、一樹先輩は笑顔で手を振って行ってしまった。
くそうやっぱりカッコ良い……じゃなくて。
「それじゃあ行こうか、小林さん」
「あの、あたし一人で大丈夫ですけど…」
おずおずと辞退すると、有無を言わさぬ笑顔。
「一樹に頼まれたからね。万が一君に何かあったりしたら、僕が怒られちゃう」
だから、ね?と言われてしまえば断れなくて。
結局あたしは金久保先輩に教室まで送ってもらったのでした。
「おはよ、颯斗」
「おはようございます。今朝は金久保先輩と一緒だったんですね?」
廊下で少し話していたから、颯斗にも見られていたらしい。
「来たのは一樹先輩も一緒だったんだけどね。自分は生徒会室に寄るから送ってってくれって、金久保先輩に」
いくら女子が少ないからって、過保護すぎるよね。
そう苦笑すると、颯斗は顎に手を当てて少し考えるような素振りを見せる。
「そうですか、会長が…」
「…颯斗?どうかした?」
「いえ、なんでもありません。ところで、今日はいつもより遅いんですね?」
すぐにいつもの笑顔に戻った颯斗は、首を傾げた。
「あー…昨日月子とお泊まり会したから。一度自分の部屋に戻ったら遅くなっちゃった」
次は直接来れるように準備しよう、と一人で決意を固めていると、今来たらしい犬飼が近づいてきた。
「よ、はよー」
「おはようございます」
「おはよー」
何故かニヤニヤしている犬飼を訝しげに見ると、彼は一層笑みを深める。
「…なによ」
「小林ィ、お前、好きな奴いるんだってな?」
…一瞬、思考が完全に停止した。
「なんで知ってんの?」
「さっき夜久に会ったんだよ。お前と恋バナしてたから少し眠いってさ」
「月子…」
後で口止めしておかなきゃ、と真剣に呟くあたしを、颯斗と犬飼が微笑ましそうに見ていることは、あたしには気付く余裕は無かった。
(ところで、好きな奴って誰だよ?)
(え、)
(それは僕も気になりますね)
(…教えないっ!)
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