「いらっしゃい、優ちゃん!」

「お邪魔しまーす…」

寮に戻って、私服に着替えた後。
あたしは月子の部屋にやってきた。
まぁ、やってきたと言っても隣なんだけど。

部屋に入ると、テーブルの上には所狭しと並べられたお菓子達。

「え、なにこれ」

「楽しみすぎて、張り切っちゃった」

恥ずかしそうに笑う月子は可愛いけれど、これは多すぎじゃないかな…。

「さ、優ちゃん、座って座って!」

促されるままに向かい合わせに座ると、月子はきらきらと瞳を輝かせている。

「恋愛相談だったよね?」

「あ…うん」

「入学してからまだ一ヶ月くらいだし…私に相談するってことは、入学してからのこと?」

「うん、実は、その」

いくら女同士とはいえ、やっぱり気恥ずかしい。
あたしは、意を決して口を開いた。

「…好きな人が、できまして…」

「本当に!?相手は誰?」

「…月子もよく知ってると思う」

そう言って、少し落ち着こうとジュースに口をつける。
月子は少し悩んでいるみたいだった。

「錫也か哉太、とか」

「どっちもいい奴だと思うけど、違うよ」

「同じクラスの颯斗くんと犬飼くん」

「いい友達。ていうか1年じゃないよ」

「先生、ではないだろうし…そうなると先輩………あ!」

閃いたのか、月子は笑顔で身を乗り出した。

「もしかして、一樹会長!?」

「…そのもしかして、です」

そっか、一樹会長かあ、なんて、月子は頷いているけれど。

「どうしよう、月子…!」

「え、一樹会長はいい人だと思うよ?応援するし!」

「そうじゃなくて!」

「え?」

「好きって気付いちゃったから、明日からどうやって一樹先輩と接したらいいのかわかんないの…!」

もう半泣きだ。
恋愛がこんなに難しいなんて思ってなかった。

「告白、しないの?」

「振られたりしたら立ち直れないし、今の関係が壊れちゃうの怖いし」

あたしは俯いて、小さく呟いた。

「…告白して今までみたいに話せなくなるなら、仲が良い先輩後輩のままでいたい」

「…優ちゃん」

月子が隣に移動してきて、あたしは顔を上げる。と。

「優ちゃん可愛い…っ!」

いきなり月子に抱き締められました。

「うぇ、ちょ、月子!?」

「だって、今の優ちゃんって恋する乙女って感じ!応援するからね、私!!」

「あ、ありがと…」

…何はともあれ、味方ができたのは心強いです。





(実を言うと、月子とライバルになったらどうしようとか思ってたんだよね)
(大丈夫だよ。私、まだ恋とかよくわからないの)
(あたしだって…これが初めてだよ…)
(…実るといいね)
(…うん、)





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