月子に抱き着いたり犬飼に文句言ったりしていると、少し離れたところから控え目な笑い声が聞こえた。
視線を向けると、そこには空色の髪の優しそうな人。
先輩…かな?

「部長、どうかしましたか?」

「ううん、微笑ましいなぁって思って」

宮地が部長、と呼んだその人は、あたしの前まで歩み寄るとふわりと微笑んだ。

「はじめまして、小林さん。僕は2年西洋占星術科の金久保誉。弓道部の部長を務めています。君のことは、一樹や桜士郎、それに夜久さんからよく聞いているよ」

「1年神話科、小林優です!あの、一樹先輩や桜士郎先輩に聞いてるっていうのは…?」

金久保先輩の口から出た一樹先輩の名前に、一瞬どきりとした。

「うん、もう一人の女子生徒っていうのはもちろんなんだけどね。一樹が元気な女の子に懐かれたって言ってたから、会ってみたかったんだよね」

平静を装ってはみたけれど、先輩にはバレバレだったみたいで、またクスクスと笑って教えてくれた。
なんか最近、笑われてばっかな気がする…。

そうこうしていると、背後で響く賑やかな声。

「なぁなぁ犬飼!この子だろ『神話科の眠り姫』って!紹介してくれ頼む!!」

「自己紹介くらい自分でしやがれアホ!」

やたらとテンションが高い茶髪の彼が、犬飼に突き飛ばされて軽くよろけながらあたしの前にやってきた。
眠り姫…というのは後で犬飼に吐かせようと思いながら、妙にわたわたしている茶髪くんを見上げる。

「えっと、俺、星座科の白鳥弥彦。よ、よろしくっ」

「神話科の小林優です。よろしく、白鳥くん」

女子だからって変に気使ってくれなくていいからね、と言えば、彼は少し落ち着いたようだ。

「悪い、女子と話すのってあんま慣れてなくてさ、」

「別にそんな女子扱いされてもね…普通でいいのに」

「そうだぞ白鳥。小林を女子扱いしてたら、他の女は女神扱いしなきゃならんぞ」

「だからあんたはあたしに対して失礼すぎ」

犬飼の脛に蹴りを入れて、そう言えば宮地は…と視線を巡らせると。

「む、これは東月が作ったのか」

「ああ、宮地くんも甘いものが好きだって聞いてたからね」

誰よりも早くシュークリームに手を出していました。





(それじゃあ、差し入れを食べたら練習再開しようか。小林さんも東月くんも、良かったら見学していって)
(はい、ありがとうございます)
(ねぇ宮地、これ超美味しくない!?錫也天才…!!)
(あぁ、シュー生地に練り込んだいちごが絶妙なバランスを…さすがだな、東月)
(お前等…)




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