渋る哉太を半ば無理矢理に図書館に押し込み、あたしと錫也は弓道場に向かっていた。
錫也の手には、やや大きめの紙袋。

「…ねぇ錫也。差し入れって何持ってきたの?」

「いちごのシュークリーム。この間安売りしてたから、多めに買って生地にも練り込んでみたんだ」

「と、いうことは…」

「もちろん、俺が作ったんだよ」

さすがは天文科のオカン…と言うべきか。
ていうか、錫也って弱点あんのかしら。
頭いいし、料理できるし、運動もそれなりにできるらしいし、完全無欠のパーフェクトボーイな気がする。
料理以外の家事も得意みたいだし…やばい女子力的な面で勝てる気がしない。

そんなことを悶々と考えていたら、突然錫也が吹き出した。

「え、なに!?」

「一人で百面相してるからさ。それに、全部声に出てたぞ?」

「ぜっ、全部!?」

「そ、全部」

にっこり。
そう効果音が付きそうな笑顔と共に落とされた発言に、思わずしゃがみ込む。

「優?」

「うああああ恥ずかしい…これじゃああたしただの変な子じゃんか…!」

真っ赤であろう頬に両手を当てて錫也を見上げれば、クスクスと笑いながら手を差し出された。

「ほら、機嫌直して?優の分もシュークリームあるからさ」

「………ほんと?」

「あぁ。元々、差し入れに行ったら優のとこに届けるつもりだったから」

「よし、早く行こう錫也目指すは弓道場!」

ソッコーで立ち上がって足早に進むあたしを、錫也が後ろから小さく笑う。

「ほんと、単純というか何というか。…可愛いな」

「錫也ー?はーやーくー!」

「今行くから待てって。あんまり急ぐと転ぶぞー?」



そんなこんなで、やって来ました弓道場。
あ、転んでないよ!あたしそこまでドジっ子要素持ってないし。
中を覗いてみると、ちょうど休憩時間だったみたい。

「さすが錫也…ドンピシャじゃん」

「まぁ、な。失礼します」

「失礼しまーす」

少し得意気に笑い、弓道場に入る錫也に続く。
中にいたのは月子に犬飼、宮地の見知った顔。
それと、犬飼と話していた明るそうな茶髪の人と、空色の髪が印象的な優しそうな人。





(月子!差し入れ持ってきたぞー)
(あ、錫也。優ちゃんも来てくれたんだ!)
(はろー月子!宮地もやっほー)
(あぁ)
(おい、俺には無しかよ小林)
(あんたはさっき教室で別れたばっかでしょ、犬飼)



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