何がどうしてこうなったのかは、よくわからないけれど。
会長とお昼ご飯を食べた後(食堂で2年の先輩達にからかわれた…何故だ)、あたしは屋上庭園にいた。
…もちろん、会長と一緒に。

「あーあ、予鈴鳴っちゃった…」

「ここまできたら諦めろ!」

颯斗に怒られる、と嘆くあたしを見て、からからと笑う会長。

「で、会長は一体何がしたいんですか?」

「んー?」

「授業サボらせてまで連れてきたんですから、何か理由があるんですよね?」

これで理由が無いとか言ったらどうしてくれよう、あたしの怒られ損じゃないか。

「特にこれといった用事は無いんだが…そうだな、俺がお前と一緒に居たかった、じゃ駄目か?」


どくり、心臓が跳ねる。

冗談のような、本気のような、会長の表情からはどちらかは判断できない。
けれど、そう言われて嬉しいと感じた自分がいるのは紛れもない事実。

「駄目、じゃ、ない…です」

「なら良いだろ?細かいことは気にすんな!」

理由も無く授業をサボるのは細かいことなんだろうか、という疑問は、きっとこの人の前では無意味なんだろう。

「それより…お前、俺のこと『会長』って呼ぶよな」

「え、だって生徒会長ですよね?」

「いやまぁ確かにそうなんだが。颯斗とか七海達は名前で呼んでるのに、なんで俺は会長呼びなのか気になってな」

「はぁ…」

そんなこと気にされても、あたしだって特に気にしたことが無いから反応に困る。

「あ、まさか俺の名前知らないとか言わないよな!?ちょっと言ってみろ!」

「…不知火一樹先輩」

「なんだ、知ってるじゃねーか」

「そりゃ、まぁ」

貴方のネームバリューは、この学園じゃとんでもないですから。
むしろ知らない人を探す方が難しいだろう。

「よし、じゃあ会長命令だ。これから俺のことは名前で呼ぶこと!」

…出ました、会長命令。
『俺様』という言葉はこの人の為にあるんじゃなかろうか。

「…不知火会長?」

「名前だ、名前。あと、会長は禁止」

「じゃあ、えっと…一樹先輩?」

少し迷ってそう呼ぶと、会長…もとい一樹先輩は満足そうに笑った。

「ん、まぁ及第点だな。それと、お前が俺を名前で呼ぶんだから、俺もお前のこと名前で呼んでいいよな?」

「なんですかその理屈…あたしのことなんか好きに呼べばいいじゃないですか」

「それじゃあフェアじゃないだろ?とりあえず今は膝貸せ」

…意味がわからない。
フェアどうこうも、膝を貸すことも。

「膝って…ちょ、会長!?」

「だから会長禁止だって。俺は昼寝するから、5限終わったら起こしてくれ」

「そんな無茶苦茶な…!」

「いいからいいから。…おやすみ、優」

有無を言わさずにあたしの膝に頭を乗せた会長は、ふっと柔らかく微笑んで目を閉じる。
うっかりその笑顔に見とれてしまい、気付いた頃には彼はすっかり夢の中に旅立っていた。

「…おやすみなさい、一樹先輩」





(ていうか、あたしどうしたらいいんだろう)
(……寝顔写メるくらい、バチ当たらないよね)




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