「失礼しまーす…あれ、」

渋る会長を半ば強引に引きずってやって来た保健室。
扉を開けると、そこは無人だった。

「なんだ、星月先生またいないのか」

「また?」

「あの人の職務怠慢っぷりは有名だぞ」

まあ、入学したばっかじゃ知らねえか。
会長はそう言うと、椅子に座ってあたしを見やる。

「ほら、消毒するんだろ?」

「あ、はいっ」

あたしも慌てて会長の向かいに座り、救急箱を開いた。

「えっと…ピンセット、消毒液、脱脂綿…」

「おいおい、大丈夫か?」

「大丈夫です!あ、脱脂綿あった」

脱脂綿に消毒液を吹き掛けて、会長の傷に添える。
血は止まっているみたいだけど、会長は顔をしかめた。

「っつ…意外と滲みるな」

「浅いとはいえ切れてますからね。絆創膏どうします?」

「一応貼ってくれるか」

「はーい」

大きめの絆創膏を取り出して少し距離を詰める。

あたしがやりにくいだろうと判断したのか、会長は目を閉じた。

あ…結構まつ毛長い。
スッと通った鼻筋に、薄めの唇。
改めて見ると、やっぱり整った顔してるんだなぁ…。

「小林、まだか?」

「あっ、はい!ただいま!」

いけないいけない、すっかり見入ってた。
会長に声をかけられて、慌てて絆創膏を貼る。

「…はい、できました!」

「ありがとな」

目を開けた会長と、至近距離で視線がぶつかった。
不意を突かれたからなのかなんなのか、翡翠色の瞳から目が逸らせない。
まるで、捕らわれてしまったみたいに。

…どれくらいそうしていたか、扉が開く音にハッとして顔を向けると、そこに立っていたのはこの部屋の主である保険医。

「…何やってんだ?お前ら」

「星月先生…」

「星月先生、授業中はともかくとしても休み時間に保健室空けるのやめてくださいよ」

会長の言葉にあーはいはいなんてやる気の無い返事をしながら、星月先生はベッドに腰掛けた。

「そういえば不知火、お前割れたガラス浴びたんだってな?」

「怪我はこれだけなんで大丈夫ですよ。服にも入ってないし」

「小林は?」

「あ、会長が守ってくれたんで…」

「そうか、ならいい」

あたし達の答えを聞いた星月先生は、やる気無さげに伸びをして大きな欠伸を漏らす。

「手当てが済んだならさっさと行けよ、俺は寝るから」

そう言うやいなや、ベッドのカーテンを閉めてしまった。
ほんとに職務怠慢だなこの人…。





(よし、じゃあ昼飯行くかー)
(あたしも教室戻ろ…)
(待て、どうせだから俺に付き合え)
(えっ、でも颯斗、)
(後でメールでもしとけ。行くぞ!)
(え、あ、あたしの荷物…!)




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