「よっ、小林!」

「会長!」

移動教室からの帰り道、不意に後ろから声をかけられる。
振り向いた先には、軽く右手を上げる会長の姿。

「移動教室の帰りか?颯斗達はどうした」

「当番で実験用具の片付けしてたんですよ。昼休み潰しちゃうのも悪いと思ったから、颯斗と犬飼には先に戻ってもらいました」

そう言うと、会長はお前なぁ、と溜め息を吐いた。

「いくら学園内とはいえ、男ばかりの中で女が一人で行動するもんじゃないぞ」

「大丈夫ですよ、月子みたいに可愛いわけじゃないですし」

「そういう問題じゃ…っ、危ない!!」

会話の途中で急に会長が叫んだと思ったら、強い力で腕を引かれる。
視界が暗くなった次の瞬間、ガラスが割れる音と少し離れた所から聞こえた叫び声。

「…大丈夫か?」

耳のすぐ近くで響く会長の声と背中に回る腕の感覚に、抱き締められているのだとわかる。

「は、はい…あたしは大丈夫です」

「そっか、良かった」

あたしを離してホッとした表情を見せる会長の頬に、一筋の血が滲んでいるのが見えた。

「会長、ケガ…!」

「ん?あぁ、これくらい大したことねーよ。しっかし、冬服で助かったぜ…」

会長がブレザーを脱いで軽く振ると、パラパラとガラスの破片が落ちる。

「…!まさか、ガラス浴びたんですか!?」

「服の中には入ってねーし、大丈夫だよ」

「でも、あたしを庇ったせいで…ごめんなさい」

申し訳なくて俯くと、会長はあたしの頭を優しく撫でた。

「謝罪よりも別の言葉が聞きたいんだがな、俺は」

守って謝られたんじゃ、割りに合わないだろ?と冗談めかして言う会長。

「…守ってくれて、ありがとうございます」

「あぁ、それでいいんだ」


間もなく現場に駆け付けた先生により、野球をしていた生徒のボールが飛んできたのだと判明。
大きなケガも無かったあたし達は、ボールを打った生徒に掃除を任せてその場を後にしたのでした。




(とりあえず保健室行きましょう!)
(だから大したことないって…)
(駄目です!消毒くらいさせてくれないとあたしの気が収まりません)
(…わかったよ)




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