今言いたいことは、ただひとつ。

「どうしてこうなった…!」

それは、オレの心からの叫びに他ならなかった。

今日は珍しく部活も仕事も無い完全オフ。
それが確定した瞬間にオレは優っちに電話して、デートの約束を取りつけた。
それが三日前の放課後の出来事。
待ち合わせ場所はいつもの駅前、そこから少し離れた遊園地に電車で向かう。

…遊園地最寄り駅の改札を出た俺達の目の前に現れたのは、何故か勢揃いしていたキセキの世代の面々でしたとさ。

「涼太が本気で溺愛してる彼女がいるってテツヤに聞いてね。ちょうど帰省してたし、会ってみたかったんだ」

「みどちんみどちん、お菓子無くなっちゃったんだけど〜」

「園内のワゴンにポップコーンもチュロスも売っているから我慢するのだよ」

「紫原はさっきからそればっかだな」

「青峰くんも集合してから眠い眠い言いすぎですよ」

「しょーがねえだろ、こんな朝早くから集合してたら眠いに決まってんだろが」

相変わらずのまとまりの無さに、開いた口が塞がらない。
どうしてくれようかと本気で悩んでいると、優っちがオレの服の裾をくいくいと引いた(可愛すぎッス…!)

「ねぇ黄瀬くん、都内の3人はわかるけど、あとの2人は…?」

「あ、あぁ…。帝光時代のチームメイトでキセキの世代の、赤司っちと紫原っちッス。」

オレが軽く紹介すると、赤司っちは一歩前に出てにっこりと微笑む。

「キミが涼太の彼女だね?はじめまして、僕は洛山高校の赤司征十郎」

「洛山…!?」

「陽泉高校の紫原敦。よろしくね〜」

「せっ、誠凛高校の小林優です!よろしくっ」

二人の学校のネームバリューに驚きを隠せないのか、優っちはぺこりと頭を下げてから二人を交互に見て、オレを見上げる。

「青峰くんと緑間くんの時にも思ったけど、黄瀬くんの友達って凄いんだね…」

「ま、ね。それより、なんでみんなこんなとこに勢揃いしてるんスか!?」

まさか優っちに会うためだけにここまで来たとはこの人達の性格上考えにくい。
そもそも、どうしてオレ達がここに来ることを知っているのか。

「それにしても、まさかあんなに素直に教えてくれるとは思いませんでした」

「オレ等に邪魔されることくらい簡単に予想できると思うけどな」

「まあ、馬鹿正直なのは小林のいいところなのだよ」

…元凶発見。

「…褒められてる気がしないんだけど、緑間くん」

「ていうか優っち、なんでそんな簡単に教えちゃったんスか!?」

「え…黄瀬くんから電話来た時、ストバス終わりで黒子くんと火神と青峰くんとさつきちゃんと緑間くんと高尾くんとマジバにいてさ。切った後にみんなにデートかって聞かれたから、日曜日に遊園地行くんだーって」

優っちの説明を聞いて、オレは思わずしゃがみ込んだ(何スかその都内組オールスター…!)
そういえば、電話の向こうがやたらうるさかったような…これは完全にオレのミスだ。
詳しい内容はメールで決めればこんなことにはならなかったのに…不覚すぎる。

「黄瀬くん?大丈夫?」

「大丈夫ですよ、多分自分の浅はかさ加減にうちひしがれているだけです」

「どうした涼太。お前のことだから前売り券は買ってあるんだろう?早く入るぞ」

「え、まさか一緒に行動するつもりッスか!?」

「男だけでこんなファンシーな遊園地いてもつまんねーだろが。アホか黄瀬」

「今日のラッキーパーソンは旧友なのだよ。一人でも多い方がいいに決まっているだろう」

せっかく優っちと一日二人きりでいられると思ったのに、なんなんだこれは。
このままじゃ二人きりはおろかろくに会話もできなくなりそうだ。
そこまで考えて、オレは覚悟を決めた。

「こうなったら…逃げるッスよ優っち!!」

「え、ちょ、黄瀬くん!?」

「先に遊園地の中に入っちゃえば、広い園内で捕まるわけないってことッスよ!」

優っちの手を掴んで走り出し、素早くゲートを抜ける。
背後から逃げたぞ、だとか絶対捕まえろだとか聞こえるけれど、オレだってこれだけは譲れない。
ま、たまにはお姫様と愛の逃避行も悪くないんじゃないッスか?…なんて、ね。






(あ、今ジェットコースターにみんな乗ってた)
(じゃあ次はこっちッスね!つーかみんなフツーに楽しんでるじゃないッスか!)

(赤ちん、さっき黄瀬ちんと優ちん下にいたよ)
(何!?テツヤがジェットコースターに乗りたいとか言わなければ…)
(乗るって決めたのは赤司くんじゃないですか。あ、落ちますよ)
(……………!!!)




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