直ちゃん先生が豪語していた通り、屋上庭園から見る星空は素晴らしかった。
凄い、凄いと連発するあたしに、会長がくつくつと笑いながら話しかける。

「そんなに凄いか?」

「はい!星が見えすぎて星座がわからないなんて初めてです!」

地元では明るい星しか見えなくて、かろうじて星座のかたちが判別できる程度。
星座に含まれていない星まで見えるこの状況では、どこに星座があるかなんてほとんどわからない。

「じゃあ、俺と一緒に辿ってみるか!」

「え?」

指出せ、と言われて、右手の人差し指を立てると、その手を会長の手が包んだ。

「え、え、会長?」

「いいか?まずは北極星から始めるぞ」

慌てるあたしを後ろから抱き締めるようにして、包んだ手を空に向ける。
伸ばしたあたしの指が示す先には、北極星。

「北極星…ポラリスがあれで、北斗七星がそこから斜め…あそこだ。見付けたか?」

「は、はい」

「よし。ドゥベー、メラク、フェクダ、メグレズ、アリオト、ミザールとアルコルの二重星、ベナトナッシュときて、メグレズからのカーブに沿って延長していくと…」

「牛飼座のアークトゥルスと、乙女座のスピカ!」

「そう、春の大曲線だ」

耳元で空気が揺れて、会長が笑ったのがわかる。
春の少しだけ肌寒い夜の中で、背中に伝わる体温が心地いい。

「あっ、一樹会長!なに優ちゃん独り占めしてるんですか!?私も優ちゃんと観測したいのに!」

「独り占めってな…星座が見付けられないって言うから、一緒に辿ってただけだろうが」

月子が駆け寄ってきて、会長が少し離れた。
温もりが消えた背中が少しだけ冷たい気がする。

「今ね、向こうで颯斗くんが乙女座の神話を話してくれてたの。優ちゃんも何か話してほしいな!」

「神話はあたし達の専攻だからね。そうだなー…颯斗が乙女座なら、あたしはからす座にしようかな」

「カラス?鳥のカラス?」

「そう、鳥のカラス。からす座がイギリスでSpica's Spankerって呼ばれてるのは知ってる?」

「うん。γ星とδ星を結んだ線を延長すると、スピカに届くんだよね」

「その辺は天文科の専攻だよね。で、そのからす座にも神話があってね…」

神話を聞いたり話したり、あまり目立たない星座を教えてもらったり。
星月学園に入学して初めての天体観測は、とても有意義で楽しい時間でした。





(なぁ一樹ぃ、さっき小林ちゃんといい雰囲気だったじゃない)
(なんのことだ?)
(またまたしらばっくれちゃって!…好きなの?)
(小林は可愛い後輩だよ)
(ほんとに〜?)
(あぁ)
(なーんだ、つまんないの〜)
((…今はまだ、な))




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