結局、会長に手を繋がれたまま屋上庭園までやってきた。
そこであたし達を待っていたのは、月子と颯斗と、もう一人。
真っ赤な長い髪を三つ編みにして、何故かゴーグルをかけて、首からカメラを下げた…一言で言えば、変な人。

「やっとご登場だね、神話科のお姫様!来るの遅いよ一樹〜」

「…お前は呼んでないぞ、桜士郎?」

どうやら会長の友人らしいその人は、あたしに向けてカメラを構える。

「だってさー、一樹が学園のお姫様二人を侍らせて天体観測するなんて聞いたら、スクープしない訳にはいかないっしょ」

「お姫様って、そんな…!」

「侍らせるとか言わないでいただけますか、白銀先輩」

月子と颯斗の反応を横目にずずいと迫ってくるゴーグルに、思わず会長の後ろに隠れた。

「おいこら桜士郎。小林が怯えてるからちょっと離れろ」

「堅いこと言うなよ〜。ハジメマシテ、小林ちゃん。俺、一樹の友達で新聞部部長の白銀桜士郎。桜士郎先輩って呼んでくれていいからね、くひひひひっ」

会長の背中に隠れながら、目の前の…桜士郎先輩?の様子を窺う。
…なんていうか、こういう人を表現するのにピッタリの言い方があったと思う。
なんだっけ、こう…変人じゃなくて、もっと………あ、

「…変態?」

ぽつりと呟くと、先輩達が同時に吹き出した。
え、あたし何かおかしいこと言った?
確かに初対面の人(しかも先輩)を変態呼ばわりしちゃったのはよろしくないかもだけど…!

「くくっ…おま、小林、最高…っ!」

「よくわかったねぇ。俺は自他共に認める変態なんだよ♪」

「…はぁ…」

会長はお腹抱えて笑ってるし(目に涙まで浮かべてる)、桜士郎先輩は嬉しそうだし。
すっかり置いてきぼり状態のあたしの頭を、なんとか復活した会長がぽんぽんと撫でた。

「悪かったな、笑いのツボに入っちまってよ。桜士郎は放っといていいから、本来の目的である天体観測といこうぜ?」

会長に言われて、空を見上げると、そこには。

「う、わ、凄い…!」

視界いっぱいに輝く無数の星。
『満天の星空』っていうのは、まさにこういうことを言うんだろう。

ただただ驚き、星空を見つめるあたしを見て、会長は満足そうに笑っていた。





(…優さん、口開いてますよ)
(え、うぁ、まじか)




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