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「夜の屋上庭園に行ったことあるか?」
会長にそう聞かれたのは、ある放課後のこと。
「いえ…まだないです」
「そうか、ならちょうどいい。今夜、生徒会で天体観測に行くつもりなんだが、小林も来るか?」
「え…」
屋上庭園から見る星は格別だ、酒が進む!と直ちゃん先生が(授業中に)熱く語っていたのは、まだ記憶に新しい。
それに、なかなかタイミングが掴めなくて入学してからまともに星が見れていなかったから、とても魅力的なお誘いだ。
…だけど。
「生徒会で行くのに、あたしが行ってもいいんですか?」
あたしは生徒会役員じゃない。
気後れするのも事実。
「そんなこと気にするな。生徒会長であるこの俺が誘ってるんだ、文句なんか言わせないさ」
颯斗も月子も、お前なら大歓迎だろうしな!
そう言って豪快に笑う会長。
「じゃあ…ご一緒させてください」
「よし、決まりだな!一度寮に帰ってろよ。生徒会終わったら迎えに行く」
寝ないで待ってろよ?と笑う会長に、そんなに早く寝ません!と笑い混じりに返す。
「じゃあ、また後でな」
「はい!楽しみにしてますね!」
…数時間後。
月子から生徒会が終わったとメールが入った。
『一樹会長が嬉しそうに迎えに行ったからね!』の一文のおまけ付きで。
「…嬉しそうに、ね」
きっと仕事を済ませて天体観測をするのがそれだけ楽しみなんだろう、と結論付けて、部屋を出る。
寮の外に出ると、ちょうど会長がこちらに向かってくる所だった。
「ナイスタイミング!」
「月子から『会長が迎えに行った』ってメール来ましたから」
「なるほどな。んじゃ、早速行くか!暗いから足元気を付けろよ?」
「大丈夫ですよ、子供じゃあるまいし…っ!?」
言った瞬間、小石か何かを踏んだのか、バランスを崩して倒れそうになる。
会長が腕を引っ張ってくれたおかげで、地面との衝突は免れたけれど。
「ほら、言わんこっちゃない」
「…すいません…」
呆れたように溜め息を吐く会長と、縮こまるしかないあたし。
「ケガ無いか?」
「あ、はい。会長のおかげで…」
「なら良かった。ほれ」
そう言って、会長は左手を差し出した。
意味を理解できずにキョトンとしてその手を見つめるあたしに、飛び出した一言。
「危なっかしくて見てらんねぇ。手、繋いでろ」
(え…)
(嫌なら言い方変えるか。お手をどうぞ、お嬢さん?)
(…っ、)
((その笑顔でそのセリフは、反則))
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