![](//img.mobilerz.net/sozai/1299_w.gif)
『彼』が1年神話科の教室に姿を見せたのは、ある日の昼休みだった。
「おーい、颯斗いるかー?」
思わぬ人物の登場に、教室内が一瞬静まり返る。
平然と教室に顔を出したのは、入学式であの『恐怖政治宣言』をした生徒会長様。
「えっと…颯斗なら職員室に行くって言ってましたけど…」
「そうか…じゃあ、今日は生徒会休みって伝えてもらえるか」
「あ、はい」
確かに伝えます、と言うと、会長はあたしのことを数秒見つめてニカッと笑った。
「お前、小林優だろ?」
「え、あ、そうですけど、」
「何で名前知ってんのかって顔だな。俺は生徒会長だぜ?学園のことなら何でも知ってる」
とても俺様な理論を展開しながら、会長はあたしの頭をポンポンと軽く叩く。
「我が星月学園へようこそ。女子が極端に少ないから不自由することもあるかもしれないが、何かあったら遠慮なく俺に言ってこいよ」
「はぁ…」
「そんな不安そうな顔すんなよ。大丈夫だ、俺に任せとけ!」
その自信はどこから来るんだろう…と思ったけれど、聞いたところで『俺は生徒会長だからな!』と返ってきそうな気がしたから、何も言わずに頷いておく。
「よろしい!…っと、そろそろ予鈴鳴るな。じゃあまたな、小林」
最後にもう一度あたしの頭に手を置いて、会長は教室を出ていった。
その後ろ姿をぼんやり見送っていると、クラスメイトから話しかけられる。
「なぁ小林、お前よくあの会長と会話できてたな?」
「怖くなかったのか?」
「え…別に。言う程怖い人じゃなかったよ?」
話してみたら、怖いというよりはいい先輩という印象の方が強い。
「女子が少ないの気にしてくれてるし、何かあったら言えよって言ってくれたし」
「へぇ…」
みんなあの恐怖政治宣言に多少なりともびびってたみたいだ。
そんな会話をしていたら、颯斗が教室に戻ってきた。
「おや、何やら賑やかですね」
「あ、颯斗。お帰りー」
「今さ、不知火会長が来てたんだよ。何かお前に用事だったみたいだぞ」
「用事…ですか?」
「そうそう、今日は生徒会休みだから伝えといてくれって」
「そうですか…ありがとうございます」
この出来事をきっかけに、あたしと会長の距離がぐっと近付くんだけれども。
午後の授業を眠気と戦っていたあたしは、その事にまだ気付いてはいないのだった。
(よお、小林)
(あ、会長。会長も飲み物買いに来たんですか?)
(まぁな。よし、今日は俺が奢ってやるよ!)
(まじですか!ありがとうございます!)
→back