入学して早数日。

未だに「もう一人の女子」とのコンタクトは取れず。


「おかしい…隣の部屋なのになんで会えないの…」

星月学園は各々の星座によって寮が別れている。
あたし達女子生徒は職員寮に部屋があるんだけど…タイミングが合わなくて、未だに夜久さんとは会えていない。

いっそ天文科の教室に行ってみようかなぁ、なんて思いながらドアを開くと、そこには。

「小林さん、おはよう!」

にっこりと微笑む、さらさらのロングヘアーがよく似合う女子生徒。
…女子生徒、ということは。

「おはよう。…夜久さん、だよね?」

一応確認すると、ぱっと表情が輝いた。

「うん、はじめまして!天文科の夜久月子です」

「神話科の小林優です。もしかして、わざわざ待っててくれたの?」

「なかなか会えないから、我慢できなくなっちゃって」

えへへ、と少し照れたように笑う彼女。
なんだこの子超かわいい。

「あ、いつまでもここで話してたら遅刻しちゃうね。今日は私達と一緒に行こう?」

「私『達』?」

「うん。幼馴染みと…錫也と哉太っていうんだけど、二人と一緒に入学してきたんだ。紹介するね!」

にこにこと笑みを絶やさない月子(呼び捨てでいいって言ってくれた)と共に寮を出ると、寮の前に一人の男子生徒。

「おはよう錫也!哉太は?」

「多分また寝坊。あれ、そっちは…もしかして」

「うん、神話科の小林優ちゃん!優ちゃん、彼が私の幼馴染みで、東月錫也」

「はじめまして、小林さん。天文科の東月錫也です。月子共々よろしくな?」

「あ、どうもはじめまして小林優です。こちらこそよろしく!」

笑顔で差し出された東月くんの右手を、あたしも握り返す。

「そうだ、これ、お近づきの印に。良かったら食べて」

思い出したかのように東月くんが鞄から取り出したのは、可愛くラッピングされたビニール袋。
中身は…クッキー?

「錫也のクッキー、すごく美味しいんだよ!」

「え、これ東月くんが作ったの?」

「まぁな。自分で言うのもアレだけど、味には自信あるから安心して」

手作りクッキーに自信ある男子高校生…女子でもなかなかいないだろ…。

「すごいね、東月くん…」

まじまじと東月くんを見つめたら、彼は少し照れたように笑った。

「そうかな?あ、俺のことも名前で呼んでくれると嬉しいな」

「…錫也くん。いや、なんか違うな…呼び捨てでいい?」

「構わないよ。その代わり、俺も優って呼んでいいか?」

「それは大歓迎!それじゃあ改めてよろしくね、錫也!」







(…ところで、哉太遅いね)
(……起こしてくる。二人は遅刻するといけないから先に行ってて)
(哉太くんとやらはそんなに寝起きが悪いのか…)




back
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -