プロポォズ/太宰 「私と心中してみるかい?アキくん」 「いいですよ、いつにします?私、海に行きたいなぁ。 ちゃんと砂浜がある所!」 「海で入水か、ロマンチックだ」 「でも入水は苦しいのでいやでーす」 「なら海の後は、何処へ行く?山かい?」 「ん〜…水族館!」 「成程。悔いを残すのは宜しくないからね」 「その後は?」 「美味しいご飯」 「うんうん、楽しい心中になりそうだ。最後は?」 「手を繋いで、家に帰りましょう」 「おや。楽しみは明日にとっておくタイプかい」 「ずぅっと先までとっておくんですよ」 「どれくらい?」 「もうする事がなくなるまで」 「…君はやはり、優しいのだね」 「貴方の為じゃなくて、私がそうしたいからですよ。 優しいとかじゃないです。私が今死にたくないだけ」 「ならば私は別の心中相手を探すべきかな」 「それは構わないけど、嫌だなぁ」 「なぜ?」 「好きなひとが何処の馬の骨ともわからない行きずりの 女と心中したら一生のトラウマになりますよ」 「…私は一番近寄ってはいけないタイプの男だと、君は きちんと理解していた筈なのに」 「頭と心は別物なので仕方ないですねぇ」 「それは、確かに」 「動揺してます?」 「まさか。ただ、驚いてはいるかもしれないね」 「それ動揺って言うんですよ。安心してください、告白 なんかしてあげません」 「おや。どうして?」 「好きって言ったら貴方逃げるでしょう」 「もう言ってる様なものでは?」 「言ってほしいんですか?」 「……うむ、君はどうやら予想以上に私好みの女性に 育っていたらしい。改めて、私と心中してくれませんか」 「プロポーズみたいに言うなばか」 2016/09/14 19:10 |