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140字に収まらないSS/だざなな





貴方はだざななで『逃がしはしない』をお題にして140文字SSを書いてください。
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 時折、奇妙な感情が首をもたげる事がある。有り体な言葉で表すなら其れは“嫉妬”と云うのだろう。然し太宰には、嫉妬に駆られるべき理由が見当たらないのだ。これは異な事である。なれば此の感覚は、一体何だと云うのだろうか。
 背の高い同僚と朗らかに談笑する後ろ姿を横目で見遣って、大きな溜息を吐いた。
 名も無き花よ、どうか行かないでおくれ。
 そんな声が脳裏に聞こえたが、其れは誰の言葉だろうか。何を世迷い言を、と返してみるも、其の声が止むことはない。花は在るべき場所で咲くものだ。お前と共に腐り枯れ落ちろとでも云うのか。然う在るべきだ、と声は云う。莫迦げている、と太宰は思う。
 彼女も其れを選ぶ筈だ。そんな事を呟く声に、其れでは困るのだ、と太宰は、想う。
 其れでは困る。人を救う人間になると、自分は決めたのだから。…逃がしはしない。そんな呟きを残して、声は消えた。それでも、胸の内に澱んだ何かは、共に消えては呉れなかった。
 …人は自身を救済する為に生きていると、彼の友は云った。太宰が其の声の主を救済してやれるのは、いつになるのだろうか。
 ぼんやりと思考する内に、歓談も終わったらしい彼女が太宰の元へ…否、自分の席へ、戻ってくる。当たり前の様に太宰に微笑みかける彼女の花の色は、明らかに他者へのそれとは違う彩を放っている。然し其れを喜ぶ気にはなれなかった。
────逃がしはしない。底冷えする様なあの声が忘れられない。
 名も無き花よ、どうか君は枯れないで。



相対



相対、会いたい、愛対






2017/10/06 06:01





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