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診断SS/芥アキとだざなな


貴方は芥アキで『長く一緒にいた影響』をお題にして140文字SSを書いてください。
https://t.co/hIPpEV0gUf



 芥川が笑っているのを見た。ほんの時折、酷く優しい目をするのを見た事はあるが、笑っているのを見たのは初めてで、敦は暫く見入ってしまった。その表情は誰かの微笑みと、余りによく似ている。
 …笑う事を知らない人間は、周囲から…特に、心許した相手から其れを得るので、表情が似るのだと云う。
 彼女は芥川の心どころか、顔まで溶かしてしまったらしい。夫に腰を支えられながら、大きなお腹を抱えて歩いている彼女の背中を遠巻きに見守りながら、敦は、いつまで経っても敵う気がしないな、と苦笑した。
 その目尻がとろける様に下がっているのを、敦は知らない。





貴方はだざななで『君とならできる』をお題にして140文字SSを書いてください。
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 何でも出来ると思っていた。この手の届く範囲は狭くとも、この眼ならば地球の裏側だって見透かせる。出来ない事などない。不可能を可能にするだけの力を、彼は生まれながらに持っていた。……けれど、そんな太宰にも、当然ながら出来ない事は山程ある。
 例えば時間を巻き戻す事。
 例えば死者を蘇らせる事。
 例えば…そう、例えば。それは太宰の性質から言って、全くもって実現不可能と云える事柄だった。明日、隕石が降ってきて、この星が滅びる…そんな天変地異が起こるのと同じくらい、有り得ない事だった。けれど、明日隕石が降る確率がゼロではない様に、その不可能もまた、絶対ではなかったらしい。

「君となら出来る気がするんだ」

 何の脈絡もない呟きに隣に立つ彼女の目が瞬く。けれどそれもほんの一瞬で、彼女は直ぐに、「はい、必ず」とそう応える。
 太宰の言葉の意味など解ってはいないだろう。彼女はただ、信念に従ってそう発したに過ぎない。言うなればただの祈りの様なものだ。
 それでもその声に、ふと軽くなるものがある。今なら何処へだって飛んでゆけそうだ、と太宰は微笑む。然し、それでも矢張り、物事には苦難が付き物なのだ。

「まずは如何やって解らせてやるかが問題なのだよねぇ」
「私に出来る事なら尽力致しますよ」
「…それは頼もしい……」

 口から出ていく盛大な溜息すらも愛おしいのが可笑しくて、今度は突然笑いだした太宰になな子が体温計を差し出すまで、あと数分。



2017/06/02 12:17





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