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案の定約束の時間に遅れてしまった私は、本日3度目の佐藤さんの有難いお説教を聞くはめになってしまった。



『踏んだり蹴ったりだわ・・・』



疲れ果てた私はよろよろと階段を上り、屋上へと向かっている。
もー、煙草が吸いたくて吸いたくて。
こっそり内緒で、ってわけですよ。

扉を開ければ冷たい風が体を吹き抜ける。
ぶるり、と一瞬身震いした

箱から一本取出し、咥える
前を見れば1つの人影。
煙草を咥えたまま目を凝らしてよく見てみればそこにいたのは白い衣装を身にまとった伝説の大怪盗



『か、怪盗・・キッド・・・?』



「こんばんは、美しいお嬢さん。」



私の方に歩いてくる彼に向かって腰におさめてある拳銃を抜き、構える。
威嚇のつもりで足元に一発打ち込んだ。
派手な銃声音が屋上に響き渡る。



『動かないで!
動くと撃つわよ!!』


考えてみれば私は銃の扱いが下手だったりする。
自分で言っちゃうのもアレだけどっ
佐藤さんだけでなく他のみんなからも銃は持たせるな、と言われるくらいなのだから特に訓練なんかさせてもらってない。
さっき撃った銃声音に驚いたのか手の震えが酷い。

キッドはそれに気がついたのか笑みを浮かべた



「撃てばいいじゃないですか。
あなたぐらいの腕ならば簡単でしょう?
震えてるなんて・・可愛らしいお嬢さんだ。」



『・・・・っ!』



なんの迷いもなく近づいてくる。
わざと足音をたててるんだ。
なんて嫌なヤツ。


彼はもう目の前にいた。

もう1度構えて引き金をひこうとする。
するとキッドとの距離が一瞬で縮まり、抱きしめられたかと思った。
カラカラ、と手から落ちた銃が回転しながら足元で音をたてる。
なにやらハンカチのような布を鼻と口にあてられた。薬品の匂いがしてすぐに分かった

睡眠薬だ・・・!



「おやすみなさい
お嬢さん」



『ん・・・!
・・・キ・・ッド、』



しまった。

油断・・し、た・・・。

崩れ落ちる体はキッドによって支えられた。
ぼんやりとする意識の中、見えたのは白と、優しく微笑む彼の口元。

どうしよ・・、
キッドを易々と逃がした、なんて言ったらまた佐藤さんに怒られちゃうな・・


必死に開けていた重たい瞼がゆっくりと閉じていく。

私はここで意識を手放した