進撃 | ナノ

「はい?・・・今、なんて?」
「だから結菜に髪を切ってほしい」


聞き間違いじゃないかと思った。でも違ったようだ。私の耳はちゃんと正常に動いているらしい。ミカサのお願いは断れないのが私という人間。渋々ながら差し出された鋏を受け取ってしまう。


「ねえ、なんでまた急に髪を切ろうと思ったの?折角綺麗な黒髪だったのに」
「ただ、エレンに立体機動の訓練中事故になるといわれた」
「え?・・・あの、まさか、それが理由?」
「?うん」
「エレンに?言われただけ、で?」
「それ以外に理由はない」


ばっさり、はっきり言い捨てるミカサに言葉が詰まってなにもでてこなくなった。なんて恐ろしい子・・!ミカサの目を見て、これ以上言っても無駄だな、と思った。鋏を一回転させて指を穴へいれて握る。刃がキラリ、と光った。


「じゃあ、いきます」


しゃきん、と音がしてはらはらとミカサの髪が床へ落ちた。リズムよく切りそろえていく。


「これでどう?」
「うん。ありがとう」


ミカサが鏡を見ながら満足そうに微笑んだのを見て、結菜も嬉しそうに笑った。ミカサが笑ってくれるならよしとしよう。ミカサがエレンの為に生きているならば私はミカサのために生きているのだから。

とにかく、エレンは一生私の敵だ、ということがよくわかった。