みじかいの | ナノ

今日は前から考えてた魔法の実験に集中しようと思ってたのに。ある人物に捕まってしまった。



「や、沙羅!」



「・・・ナマエ」



周りに花が咲いてる幻が見えるくらいのキラキラした笑顔のナマエとは反対に顔は平然を装いながらも心では嫌な人に捕まってしまった、なんて考えてる沙羅。この目の前にいる男はそんなこと思ってるなんて夢にも思わないだろう。



「なにか用事?」



「いやー、用事ってわけじゃないんだけど沙羅が見えたからつい。」



"声かけてみた"とつけたすナマエ。それを聞いたとたん眉をひそめる沙羅。




「なに?
用事がなきゃ声かけちゃいけない?」



「べっ、別にそういうわけじゃ・・・!」



体を近くに寄せて壁ぎわに追い詰めれば沙羅は持ってた教科書などを強く握りしめ顔を染めて視線を下へと泳がせた。そんな沙羅を見てなにかを悟ったような顔をするナマエ。



「俺としてはデートに誘ってるんだけど・・
・・・沙羅?」



少し声のトーンをさげて耳元で囁けば小さく体を揺らす。これぐらいで真っ赤になっちゃって。
自然と笑ってしまう。



「わっ・・私、
実験で忙しいから!!」



ナマエの胸を押し退けて、実験室へと走っていく沙羅。そんな後ろ姿をため息まじりに見送った。



「・・・残念
フラれたかー。」



舌打ちしながら足元に落ちてたプリントを拾う。それは幸運なのか沙羅の落とし物。口角を吊り上げ不適な笑みをうかべた。



「焦らない、焦らない
今は女神は俺に微笑んでるみたいだ。」



きっと俺を見てくれることを祈って。






(落とし物デス。)
(・・今日はついてない)