みじかいの | ナノ

「涯!口あけて!」


椅子に座ってた涯が振り向き、なにかを口にいれられる。瞬間、口いっぱいに広がった甘い味。・・チョコレートだった。


「な・・っ」
「だって涯、ずーっと難しいカオして眉間に皺つくってるんだもん」


つん、と指先で軽く涯の眉と眉の間をつついてやる。そうすれば少し顔色が曇ったのが分かった。


「少し休んだら?
私やほかのみんなだっているんだし・・」
「いや、これは俺の仕事だ
俺がやる」
「・・っもう、」


"馬鹿なんだから"
そう呟けば涯に睨まれた気がした。気にしないけど。体の心配をしてあげてるんだからありがたく思ってほしいものだ。


「誰も心配してくれるひとがいなくて可哀想だから心配してあげてるのにー!」
「馬鹿か」


自分は言わないであげたセリフをはっきり言われた。


「俺はお前だけが心配してくれてればいいんだ」
「・・なによっ
やっぱ心配してほしいんじゃない!」
「邪魔だ。気が散る。」
「ふーんだ!そんなこと言われてもどかない!ずっと居据わってやる」
「・・・勝手にしろ」



もう一度"馬鹿だな"、なんて言葉が聞こえた。今度は甘く優しく、柔らかかった
涯の笑顔と共に。