みじかいの | ナノ

「翼宿の髪っておひさまみたいね」


愛を知りたいからきみの髪を撫でる



なまえはそう言ってはにかむ様に笑った。
「・・っ!急になんやねん!」
「翼宿この前私の髪の毛をふわふわして綿菓子みたい、って言ってくれたでしょ?それで考えてみたの。」
顔を赤くして慌てる翼宿の隣に腰かけた。そっぽを向く翼宿の肩に頭を倒し、密着する。さらに顔を赤くさせるがそれだけでなく心音が早く、ばくばく言ってる。
「・・それにね。」
「あ?」
小さな掌を翼宿の頭におき少しごわごわとした感触がする髪を撫でてやる。
「私はそんな翼宿の髪が大好きよ。」
「〜〜・・!」
「どうしたの、翼宿?」
自分の膝に顔を埋めてしまった翼宿に不思議がり覗き込む仕草をする。だが表情はまったく見えない。
「おま・・!そんなことよう軽々しく・・っ」
「どうして?本当のことなのに。」
「好きだ、とか愛してる、とかの言葉はよう言わんのになあ」
「・・っあれは別だよ!もうっ」
今度はなまえの顔がだんだんと紅潮していった。
「言ってくれへんの?」
「・・今ここで?」
「おう」
「やだやだやだ!絶対!無理!」
「いくら俺でもそこまで拒絶されればへこむんやけど」
翼宿の袖をぎゅっと握って顔を俯かせる。瞬間、鼻を擽る愛しい人の匂い。
「・・翼宿のいじわる・・」
「なまえに比べたら優しいもんやで」
「・・!私苛めてなんか・・!」
ばっと勢いよく顔をあげる。瞬間、唇に柔らかい感触。
翼宿の顔がすぐ近くにあり、それはゆっくりと離れていった。
「・・お前の髪、綿菓子みたいやって言うたんやけど忘れてるやろ。俺は他のことにも例えて言うたで。」
「え!・・え!?」
髪の毛をぐしゃぐしゃにされた。


「花みたいやな」

八重歯を覗かせて得意げに笑う翼宿に悔しさを覚えた。

「みんな!どうしよう!翼宿がオカシイ!」

「なんやとコラア!」



それはきっと私が好きだと言った綿菓子の写真を見せたらたまたま私の髪の毛に似てるね、って翼宿が言ったんだ。ただそれだけの話。でも覚えててくれたことに私は嬉しさを感じて、暫く翼宿の顔が見れなかった。


(12/03/17)