「なまえさんなまえさん」
「・・・ん」
愛しいひとが呼ぶ声でゆっくりと閉じていた瞼を開かせる。手を握ればどうしたのと聞いてくる。わたしはなぜか笑みが零れ笑ってしまう。
「夢を、ねえ見ていたの」
「夢?」
「そう。とてもとても幸せな夢」
まどろむわたしにアリババはにやりと笑った。
「お腹いっぱい食べたーとか」
「…アリババくんはわたしをなんだと思っているの!」
「スミマセン!」
ぷん、と拗ねるなまえにアリババは慌てた。だけどすぐに笑う声が聞こえてきて。なまえのそんな仕草にアリババも緩やかに笑みを零す。
「なまえさん」
「なによ」
「教えてくださいよ。なまえさんの見た夢を」
「〜……」
なぜだかなまえは頬を赤らめた。不思議に思うアリババは首を傾げる。なまえは唇をアリババの耳元によせ、つぶやいた。その発した言葉に、一瞬だけ、目を開かせる。だけど。それは一瞬で。
すぐにアリババは幸せそうに笑い、なまえの身体を抱き寄せた。
『アリババくんとの赤ちゃんを授かった夢をみたの』
それは遠くない、未来の約束のかたち。
(12,1229)
春のそよ風がはこんだ幸せ