「…った!巴、衛…爪いたい…」
「ああ…すまない…っ」
胸を愛撫していた巴衛の手がぴたりと止まる。薄暗い部屋での情事は見えずらく、吐息まじりに痛みを訴える声に巴衛は酷く驚いていた。
「…大丈夫か?なまえ」
「ん…平気。だから…ね?」
続けて。そう耳元で甘く囁き巴衛のおおきな手に触れる。それは緊張しているのか少し汗ばんでいた。
「巴衛の手、汗すごいね」
「笑うな」
「…ごめんでも嬉しいな、って」
「おかしなやつだな
だが緊張するのはあたりまえだ
力をいれたらおまえが壊れそうで怖い」
ぎゅう、と抱きしめる巴衛は震えているように感じた。愛しさがこみ上げ、自然とわらってしまう。
「私は平気なのに」
「…馬鹿言うな傷なおるの遅いだろ」
「それ、は、」
言葉を塞ぐように優しくキスをしてくれる。唇までもが震えている。「人間だもの」そう言おうとした自分。言わなくてよかったな、と思った。
「巴衛・・」
「・・・・」
艶っぽい、熱っぽい視線で見つめられ巴衛の胸が跳ねる。気づかれたくなくて巴衛はなまえの右頬を抓る。
「いた!なによお巴衛〜」
「相変わらず間抜けな面だ」
「酷い!」
もうムードもなにもあったもんじゃない。じたばたと腕のなかでもがくなまえとそんななまえを見ている巴衛。いつもと同じ瞳だけど今日はなんだか違う気がした。
「巴衛?」
ーー・・・前はこんなこと思ったこともなかったのに。好きだと気づいた途端愛しくて愛しくて堪らない。
(俺はこんなにも、なまえが)
「俺が人間と恋に落ちるなんてな」
「え・・?」
きょとんと目を丸くしたなまえが妙に憎たらしくて巴衛はもう片方の頬も抓った。
title;リラン
(121221)