「あのさ、
よく聞こえなかったんだけどもっかい言ってくれる?」
「・・だからね
忘れちゃった」
はあ?、と眉を潜めながら見て言う俺になまえは両手を合わせて バレンタインと言う存在を忘れてました と謝った。まだチョコレート作ったんだけど冷蔵庫に忘れてきたの と言われた方がマシだった。
なにそれ。
地味に傷つくんですけど。
「あう・・
・・ごめんなさいリョーマ」
半べそで謝るなまえ。だけど意外とショックを受けた俺は答えないまま教室からでた。授業を受ける気分でもないから屋上へ向い、昼寝をしようと足を運ばせる。追ってきてほしいと願ってた本人は一度も俺の目の前に現れることはなかった。
「越前と喧嘩したあ?」
「しかも原因がバレンタインって・・」
「やるなあなまえ」
桃ちゃん先輩をはじめ、大石先輩や不二先輩が順に声を発する。なまえはドリンクを作る作業を黙々と繰り返していた。
「それで今日がバレンタインだってことにいつ気がついたんだい?」
「・・朝に・・
リョーマの席に女の子たちが群がったのを見たとき」
「へえ、
越前も結構やるね」
「・・キライ」
「・・それは越前が?それとも忘れてた自分が?」
不二先輩にそう聞かれて顔をあげた。ふてくされた顔を不二先輩は笑う。むっとなって更に顔を不機嫌にさせた。
「リョーマですよ!
心がちっちゃいから背もちっちゃいんだ」
わたしがそう声を張り上げて言えば周りにいた誰もがぶはっと吹き出した。
「なまえ
それは直接越前に言ったらいいんじゃないかな?」
「なに言ってるんですか
不二先輩。そんなことリョーマに言ったら 「俺がなに?」 」
「へ・・?」
冷めた声に目を見開かしてそっと後ろを見てみればそこにはたった今まで話していた彼の姿があった。一気に身体から血の気がなくなる感覚に襲われる。
怒ってるのは一目瞭然だった。あれだけ部員が群がって練習していたのに自分のところまでが綺麗に道になっている。このオーラに負けたんだろう。
朝のことに文句を言いにきたのか。お昼休みにでも近くのコンビニに買いに行くべきだった。と心の中でいましがた後悔した。
もう遅い、ですよね。
ラケットが入っていたバッグをおろし、ポッケからなにかを取り出す。
「これさ今朝もらったチョコバー」
「・・・?
う、うん・・」
すっと、見せられてクエスチョンが頭の中にできあがる。びりっと袋を破り、それを差し出してきたから更に混乱する。
「食べさせてくんない?」
「は・・!?」
いきなりの発言に顔が一瞬で真っかっか。隙間から咥えさせられたチョコバーのチョコが少し溶け、甘い味が広がる。
「リョっ、マ!」
制止なんか聞いてもらえるはずもなく。きゃーと言う声の中、ぽき、とチョコの折れる音が響いた。
「これで許してあげるよ」
「・・ばか・・」
残ったチョコバーは口から離れ、砂に落ちる。そのまま唇が触れ合い残ってたチョコをちゅっと吸い付いて舐めとった。
「甘いのはアンタの方だね」
(やっぱり明日に持ってくるね、・・チョコレート)
(チョコ以上のものもらったからいらないよ)
sweet happy varentain!