少女の小さな背中を追い掛けるすらり、背の高い青年
「なまえ様!
待ってください!」
必死に制止する青年をふりきり、小さい歩幅で小走りで歩く少女、なまえ
「なまえ様!」
「・・・・・・」
何回目かの呼び声で歩かせてた足を止めた。
体をゆっくり振り向かせる
「なまえ様
急にどうされたんです?
教室を飛び出されて」
スーツ姿の男性がいきなりあらわれて目立つものだからパニック状態に陥った。クラスメイトに質問攻めに合い、どうしたもこうしたもないもんだ。
「どうしたんです?じゃないわ!なにしに来たの!」
「なまえ様がお弁当をお忘れしたので届けに・・」
「余計なことしないで頂戴」
ぷい、っと反対に目線を反らすなまえに不思議がる。お弁当を持ち、慌てる姿や2人でいることによる違和感に周りの視線が痛いほど突き刺さる。長身のスーツ姿の男性といて、自分のお弁当を持つ彼。似つかわしくなくて、笑う声も耳に届いた。
「・・あのね、教室までこないでくれる?
これじゃ見せ物よ!
恥ずかしいじゃない!」
「申し訳ありません
なまえ様がお腹をすかされているんではないかと思うだけで心苦しくて・・
迷惑でしたでしょうか?」
切ない瞳を潤ませて言う御狐神になまえは口を うっ とつぐませた。これは彼の得意業だ、となまえは思っている。
だってこの表情で言われればもうなにも言えなくなってしまうのだから。
「〜〜・・!
もういいわっ」
荒々しく御狐神の手からお弁当を奪い取った。どうせ今から教室へ戻ってもゆっくり昼食を取っているほどの休み時間など残っているはずもない。なまえはとてもお嬢様とは思えないほどのため息を盛大に吐き出した。心配そうに声をかけてくるが応える気力もなく。
「じゃあ私は戻るわ」
「はい」
背を向け、歩きだす。ちょっと進み、なにかを思い出すようにあ、と声をあげた
「・・帰りは車で送って頂戴」
「はい。かしこまりました」
「あと、お弁当は玄関まで取りにいくから携帯に連絡すること」
「はい」
「・・・あとこれ、
ありがとう」
お弁当を軽く持ち上げ、指をさしお礼を言う。もともと赤かった頬を更に赤くさせながら。びっくりしたような表情をするみけつかみに恥ずかしさが込み上げ、また背を向けて今度は逃げるように走り去った。
見えなくなるまで背中を目で追っていた御狐神は口もとを緩ませ、ふっと微笑む
「・・なんて可愛いひと」
帰ったらいっぱいいっぱい頭を撫でてあげよう。
だって素直じゃない不器用な彼女だから。