みじかいの | ナノ

ほんとはサッカーなんて大嫌いだった。
だってなんであんなに必死になってボール一つを追いかけているのか訳が分からない。
雷門中に入学してまもないころ、兄である守にマネージャーをやらないかと誘われた。

もちろん即答で断る私に守はめげず、笑顔で誘い続ける。
それは止まることなく延々と続くのだった。


「・・・いいかげんにしてよ
お兄ちゃん」


「サッカーは絶対楽しいって!なっ!?
やろうぜ!」


「それはお兄ちゃんが、でしょ」


昼休み。
せっかくの貴重な休み時間
さすがに限界なのか、平静を装いながらも声は苛立っているのが分かる。
だいたいマネージャーなら他をさがせばいいものの、なぜこんなにもしつこく誘い続ける?
中学生活をこんなサッカーで終わらすつもりはなかった。

・・だが、これはあまりにもしつこい。


「なー!」


「うざい!」


こうして言い合ってる間に周りに人が集まってきたから移動する。
それを猫のように後ろをついてくる守。
苛々がつのるばかりの私に守はサッカーの魅力ばかりを話す。
なにがそんなにいいのだろう?

これ以上つき纏われるのが嫌になったのか足を止めて守の方へと体を向けた


「ただの玉蹴りじゃんか」

「そうかどうかは自分の目で見てみろよ!」


「・・・、一回だけだよ」


嫌々ながらも約束する私に守はにかっと笑った。

甘いなぁ、私も



約束の放課後。
私は奇跡を見た。



「ファイヤートルネード!」


「うわ・・」


空中を舞って、技をはなつ彼は輝いてみえて、
一瞬にして私の頭の中にあったサッカーに対する気持ちを"好き"に変えてしまった。

サッカーだけじゃない
・・・彼のことも



「・・お兄ちゃん、
私サッカーやってみてもいいかも」


「ほんとか!?」



不純な動機

理由なんて関係ない
こんなにもドキドキしてるのはきっと、