みじかいの | ナノ

「おはよう、エド。
今日もちっこくてかわいーね!」



「だぁれが豆つぶドチビかあぁああツ!!!」



朝はいつもこんな感じで騒がしい。



「てめぇ、なまえ!!
もう1回言ってみやがれ!」


「兄さん!やめなよ!!」



今にも殴りかかろうとしている体勢でいる、兄であるエドワードを必死に止めようとしている弟のアルフォンス。


当の本人は


「なまえちゃん!
今日も可愛いね!!」



「あははッ
ありがとうございます!!」


まわりの軍の人達に手を振り笑顔で応える。



「って聞けよ!!」



まったくエドワードの話を聞いてないかと思えば急に振り向き、コツコツと足音をたててエドワードに近づく。


にっこりと微笑むなまえ

不覚にもそれにトキめくエドワード。



「はい!」



そう言ってなまえが差し出したのは牛乳。
牛乳嫌いのエドワードにとっては見たくない物だった


「エド、カルシウム足りてないんじゃない?
イライラしすぎだし。
だからいつまでも“ちっこい”んだよ。」



「〜〜〜ッ!!!」



またもアルフォンスがとってかかろうとするエドワードを確保。


「ッ!
なまえはまた大佐のとこ?」



話をうまくすり変えるアルフォンスになまえは困った顔をする。



「うん。
大佐の書類今日提出しなきゃいけないんだ。
取りに行かないと。」



特務科学班に所属している彼女は研究ばかりしているが大体の仕事は大佐の雑用係である。



「そっか!頑張ってね!!」



「ありがとう。
アルも調べもの頑張って!」


エドワードとアルフォンスはここのとこ軍の宿舎を利用して調べものをしているらしい。
そのおかげか毎朝こんなやりとりがおこなわれているエドワード達とは大佐繋がりで仲良くなったのだったなまえが人なつっこいためすぐ打ち解けたが。
エドワードの反応が楽しくて、ついつい背のことでエドワードをいじめてしまうのは毎日の日課になってしまった。



(スキンシップも大事だようん。)



くすくす笑いながら大佐のいる部屋へと向かう。

しかし数分後、彼女が目にしたのはまぎれもなく机に突っ伏して寝ている大佐の姿だった。



「・・・・・・。」



「あら、なまえ。
どうしたの?」



「あ、ホークアイ中尉。
今日提出の大佐の書類、取りにきたんですけど・・・。」


大佐を指さし言うと大きくため息をついた。



「仕方ないですね・・・また後で取りにきま・・・・。」



そう言いながらその場を立ち去ろうとする。

しかし



「起きてるんでしょう?
大佐。」



「中尉?」



中尉の一言で足を止める。大佐の元へ歩み寄り、銃を構え足元に向かって何発か打ち込む。



「うぉうっ
危ないな!いきなり何するんだ、君は!」



がばっと勢いよく体を起こす大佐。



「えぇえっ!?大佐?!!!」



普通に銃を撃った中尉にも驚いたが、たぬき寝入りをしていた大佐の方にも驚いた。



「なまえの手をわずらわせるようなことするからでしょう?」



そういいながら腰の元あった場所に銃をしまう中尉。


「そうすれば沢山なまえと一緒にいれるじゃないかと思ってね。」



「!」



「じゃあ、なまえあとは頼むわね。」



「あ、はい!
お疲れ様です。」



ふぅ、とため息をつきながらドアからでていく中尉に一礼する。
パタン、とドアがしまるのを確認すると大佐の方へと体を向けた。



「大佐!
さっさと仕事をしてください!!」


「やれやれ、冷たいな・・。一体君は仕事と私、どっちが大事なのかね?」


「そんなの仕事に決まってるじゃないですか。」


なんの迷いもなく言ってのける彼女に大佐はしかめっ面。


(この子は昔からこうだったな・・・・・。
鋼のに似て頑固だ。)



「なまえ。」


「なんですか?大佐。」


呼ばれれば大佐の傍に行ってしまうのは、もうあたりまえのことで。


真剣になまえを見つめてくる大佐にどきっとしてしまう。


(この人は・・・。
普段からこんな顔しながら真面目に仕事してくれればいいのに。)


大佐は自分の頬にトントンっと軽く指で触れ挑発する



あぁ、もう。この人は。



そんな瞳で見つめないで。


触れてしまいたくなる。




「なまえ。好きだよ。」



ふいに耳元で低く囁かれる大佐の声。



なんてずるいんだろう。
この人は。



「・・・ずるい、です・・・・。」


「ん?」



「今日だけ・・・ですよ?」



風になびくなまえの髪が大佐の視覚を遮る。

ふいに大佐の頬に触れるなまえの唇。
彼女の温もりが、匂いがなんとも心地よかった。

そこには恥ずかしさのあまり顔を真っ赤ににして俯いているなまえと反対に満面の笑顔の大佐の姿があった。



―――――――
(どうした?)
(大佐って女たらしだよね・・・・。)
(なんだね、それは。)