みじかいの | ナノ

忘れ物を取りに教室へ入ったら同じクラスのロキくんが女の子とキスしてる現場を目撃。
重い沈黙の空気が流れた。


「・・・・えと、お邪魔しました?」



なんで過去形になる。
分からないまま走り去った。
後ろでロキくんが叫ぶ声がするけど今の私には届かない。
頭の中がさっきの光景でぐるぐるしてる。
確かロキくんは浮気性だって噂が流れてた気がする。
・・・いや、絶対そうだ。
だって一昨日に裏庭でたまたま見かけた時は今日と違う子だったもん。
ちょっといいな、なんて思ってたからショックをうけてる自分がいる。
これは失恋・・・でいいのだろうか?
走らせていた足を止めて、ない頭をひたすら回転させてみる。
1分、2分・・時は刻々と進んでいくけれど答えはやっぱりでてこない。
いきなり肩を掴まれ、振り向けばそこにいたのはロキくん。
なんでか息をきらしていて少し汗をかいている。



「あ、あの・・・っ」



「・・ぜぇっ、は・・っ
足、速すぎだろ」



だって一応陸上部だもん。
女だからってなめられたら困ります、ロキくん。
なんて心の中でつっこんでみる。



「・・・、
なにしにきたの?
彼女ほっといたらだめじゃん。」



「彼女とは付き合ってない」


「だってキス、」



「告白断ったら1回だけ、って無理矢理された」



なんだ。
その話を聞いた私はすごく安心してる。
安心したら涙がでてきた。


「ちょ!
なんで泣いてんの!?」



「うっさい!馬鹿!
私だって分かんないわよ!」



涙をセーターの袖で拭いながら逆ギレ。
さすがのこれにはロキくんも困ってる。
私もこれは面倒くさい女だと思った。
でも涙が勝手に溢れて止まらないんだから仕方あるまい。
ぐしぐしと鼻を啜りながら泣く私にロキくんは何も言わないで頭を撫でてくれた。
こんな優しかったっけ?




「・・・早く泣き止んでよ。
でないと僕、帰れないじゃんか。」




「・・・帰ればいいじゃない」




これは・・なんというか、可愛くないぞ、私。
でも顔が熱い。
絶対真っ赤だ、私の顔。




「ん?」




にやにやしながら私の方を見てくるロキくん。
見られたくなくて必死に両手で顔を隠したのにわざわざ外そうとするところが前言撤回。
なんとも憎たらしい。
全然優しくない。
意地悪だ。




「や―――!
馬鹿!触るな!」



「そんな維持になったって可愛くないよ」



更に強くなる力に呆気ないくらい力負け。
そのまま引っ張られ、私の目の前にはロキくんの顔。



「うん、この方が可愛いじゃん」



顔全体まっかっか、半泣きな私を見てロキくんは意地悪くそう言った。
絶対楽しんでる。
笑顔が意地悪する時の顔だもん。
私には分かる。





意地悪は好きの裏返し
(こんなヤツ、絶対好きなんかじゃない)






(僕って泣くほど愛されてたんだね)
(自惚れすぎ!)