みじかいの | ナノ

俺はどうして彼女だけを見ててやれないんだろうと思う。
中庭で寝転がってたら女のこたちが群がってきて。
暇だからまぁいいか、なんて喋ってたらキスしてなんて言いだす。
周りでは私もー、なんて騒ぐからいいよ、と言えば甲高い声があがった。
冗談まじりに1人ずつ頬にしてやれば後ろから本がバサバサと落ちる音がする。
そこには本命の彼女がたっていた。
呆れ顔でこっちを見てるがみるみるうちに険しくなっていく。
落ちた本はそのままにして走り去る彼女の後を追い掛けた。
男だからやっぱり追い付くのは早いわけで。
腕を掴めば、彼女は走るのをやめて振り向きざまに叫ぶ。


「言い訳なんて聞きたくないっ!」


俺が言い訳をするために追いかけてきたのだと思ってる。


「私ってジョージのなんなの?
もう訳分かんない・・っ」


涙を流す彼女を見てたらなんだか自分の胸がずきりと傷んで、
気がついたら体が勝手に動いて夢中でキスしてた。

驚き、俺を見る顔が可愛いなんて思う俺はどうなんだろうか。
彼女の腰に手をまわし、自分の方に引き寄せる。
もっと彼女を感じたかったから。
体温が、匂いが、なんとも心地よい。
だがそれは一瞬で儚くも散ってしまった。
俺の溝おちに拳がはいり、思わず膝をつく。
痛みに耐えるようにしてれば上から声が降ってきた。

「なんなの!?もう!
そこらへんの女の子達と一緒にしないで!!
ジョージは一体なにがしたいの!!」


この言葉に考えてこむ。


「・・俺も分かんねぇんだけど、」


「な!
なにそれ・・っ」


無責任なこの言葉に怒りはさすがに限界だ。
もう一発殴らないと気が済まなくて拳をあげれば、更にぼそりと呟くジョージの声。


「や、その、
・・あれだ。」


「?」


「泣くなよ。」


「ジョージのせいだよ」


「・・・そうだよな、
ごめん」



なんだこの変わり身の早さは
こんなにあっさり謝られてしまえば拍子抜けしてしまうではないか。
許せないことされたのに。許す必要なんかないのに。

「もっかいキスしていい?」

ジョージの言葉に少し考えて返事の代わりに一回、小さく頷いた。


好きすぎて、彼の言葉は魔法のよう。


惚れた弱み、ってやつだろうか。


(こんなんじゃいつまでたっても離れられないね)

(離す気なんかないけど)