みじかいの | ナノ

ことのはじまりはほんのささいなことだった。
ジョージのキス現場に遭遇したことがキッカケ。
それは軽い、なんてもんじゃない激しく濃厚なキス。
いくら人がいないからって中庭でよくやるわ。
相手の子なんて腰が抜けてジョージの腕に支えられてる状態だ。
頬を染めて涙目。
それを見てピンときた。
ジョージから女の子が離れられず群がってくるのはこのせいか。



「・・・まざる?」


「結構!
どうせジョージのキスなんて言うほどでもないんだから!」


この言葉にぴくりと眉を動かし反応するジョージ。
腕の中にいる女の子を優しく寝かせて、体の向きを変えて近づいてくる。



「言ってくれるね。
俺のキスがそれほどかどうか試してから言ってほしいな。」


「ちょ・・!
近づかないでよ!」


じりじりとにじり寄ってくるジョージを避けるように後ろへとさがる。
だが、腰を掴まれ、ジョージの方へ引き寄せられた。吸い付くように近い唇からはお互いの吐息が伝わる。
匂い、温もり、なにもかもが直に伝わってきてなんだか心地いい。
なんだろう。
抱き合うってのはこうゆうものなんだろうか。


「やだ・・!
離してっ」



徐々に近づく唇。



「あそこまで言われちゃな。
こっちにも男のプライドってものがあるんでね。」



「は・・?
そんなの知らな、い、
んぅ・・・っ」



小さな抵抗も虚しく、重なったお互いの唇。
深く、深く重なりあった。
実はこれがファーストキスだったりする。
別にジョージが嫌だって訳ではないし、初めての相手がジョージで良かった、と言うわけでもない。
むしろ嫌って気持ちがないことに驚いていて。
むしろジョージはどう思ってキスをしてるんだろう。
プライドがどうこう言ってたから、たぶんそのため。
・・・もしそうだとしたら腹立たしい。
とかなんとか考えてるうちに時間がたっていって。
ふと頭によぎったかすかな疑問。
・・・どうやって息をしたらいいのだろう。
こんな時に思うことじゃないことだろうけど仕方あるまい。
・・・分からない。
酸欠状態に近づいてきたのかジョージの胸を叩けばそれはジョージの手によって止められてしまった。
そのままジョージは柔らかい唇を味わうかのようにキスを続ける。



「ふぅ・・ん、ん・・・!」

なにか口内に感じる違和感。
ジョージの舌が歯列をなぞり、舌を侵入させた。
いきなりのことに体をびくつかせる。



「ん・・!んっ!!」



角度を変えて、何度も何度もキスをする。
なんだろう
この感覚は
初めてだらけのことで訳が分からなくて。
ジョージに全てを委ねるが自分が自分じゃないみたい。
体がぞわりと震えて、頭の奥にびりびりと衝撃がはしる。
飲み込みきれない唾液が唇から零れた。
伏せてた睫毛を開かせ、見あげれば余裕のないジョージの顔が瞳にうつる。
こんなジョージを見るのは初めてだ。
立っていられないほど力が抜けて、ジョージの胸へ倒れこむ。



「おっと!」



「げほっ・・・ぜ、は、」



肩で息をする私の頭を優しく撫でる。
ジョージは息一つきれてなくて、得意気に微笑んだ。


「・・・感想は?お姫様。」


「・・・・・っ!」


余裕のジョージに全く反対の私。
言ってしまったら負けな気がする。



「・・・別に。」



「あれ?
気持ちよさそうな顔して腰抜かしたのは誰だっけ?」


「っ!
ジョージの馬鹿!嫌い!」


だが、まさにその通りで腰を抜かして立てない私。
下から見上げ睨む形となっている。



「素直に言ってくれなきゃもっかいするけど。」



「・・・っ!・・・!!」



あぁ、もう。
なんなんだ、この男は。
そんなに言わせたいのか。そんなこと言われても分かんないんだっつの。



"もう負けでいい"


そう思ったお姫様はジョージの耳元でゆっくりと囁いたのでした。