みじかいの | ナノ

ハリーへの片想い歴早1年。
どんなにアピールしても気がつかないハリーに痺れをきらした私はある手段を使うことを決意したのだ。
それは3ヶ月かけてようやくできあがった。
もちろんハーマイオニーの力も借りて。
というか、ほぼ全て作ったのはハーマイオニーだ。
私は材料を集めたりしただけ。
"恋の薬"
世の中で聞く惚れ薬というモノ。
こんなことをするのは自信がない乙女だけ、って思っていたのにまさか自分が試すことになるとは。
あまり人の気持ちを無断で変えるのはよくないことだが、もう我慢の限界だった。
たとえ嘘でもハリーの口から"好き"だと聞きたい。
ズルいけど
卑怯だけど
きっと聞けたらこの恋を諦められる。
恋心を忘れてまた新しい恋にチャレンジするんだ!

そんなこんなで今私は惚れ薬入りのお菓子を(これもハーマイオニー作)片手にグリフィンドールの談話室に来ている。
ハリーはロンと一緒に話ながら楽しんでるようだった。
そんなハリーを見て、今からしようとしてる自分の行動にぐ・・と罪悪感が芽生えた。

(やっぱやめたほうがいいのかなぁ?
ばれたらそれこそ嫌われるかも。
絶交とかなったりしたらそれこそやだ・・!
でもでも、ハリーの気持ち知りたいし!!)



「なにやってるの?」


「えと、ちょっと考え事・・・って、わぁ!
ハリー!!?」



いきなり目の前に現われたのは愛しのハリー。
隣にはロン。
2人とも変な目で見るようにこっちを見てる。
一瞬怯んだ私の心はそう簡単に挫けることはなかった。


「あ、あのね
新作のケーキ焼いたの!
よければ・・っ」


そう言いながら包んであるリボンをほどく。
中からはナッツがトッピングされたマフィンがでてきた。
まだ焼きたてに近いマフィンからはいい匂いがただよってる。



「わぁ!
いいの?」


笑顔な2人に心がぐさりと痛む。



「あ、ロンはこっちね!」


さりげなく入ってない方をロンへと渡す。
嬉しそうにマフィンを頬張るロン。
ロンはどうだっていい。
ハリーにこの惚れ薬入りのマフィンを食べさせられればいいのだから。
ハリーにマフィンを渡して口に運ぶ姿を見つめる。
そんな行動がスローのように見えてしまって仕方がない。
マフィンがハリーの口に入るまでもう少し・・



「いー匂いがすると思ったら!
これ姫の手作り?」



「ジョージ、フレッド!」


そこへはいってきたのがお騒がせ双子のジョージとフレッドだった。
食べようとしていた仕草をやめて、2人を見るハリー。
もう少しで惚れ薬はハリーの口の中だったというのに!
私は心底心の中で双子を睨んだ。



「うん、そうだよ!
よければ僕のを一口食べる?」


「は!?」


なにを言いだすんだ、ハリー。
それだけは絶対ダメに決まってるでしょ!
そう言いたい、言いたいのに。
ロンの方を見ればもう完食してるし!



「いっただっきまーす!」


「フレッド!
俺にも残してくれよ!」



すぐさま視線を双子に戻せばもうマフィンは彼らの口の中。
しかも半分こして食べてるからハリーの分がないことに気づく。


「ちょ・・!
ジョージ!フレッド!
ハリーの分がないじゃん!」


声を張り上げながら割って入る私にハリーは苦笑いする。
笑うな、ハリー!
これはハリー以外食べたらだめなんだって!!
だって、だって・・!
体をぷるぷると震わせて途中まで言ってはいけない言葉がでてきそうだったので我慢する。
そう言えばジョージとフレッドは・・!?


「やっぱ姫の髪は綺麗だな。
シャンプーなに使ってんの?」


そう言いながらフレッドの唇が私の髪に触れる。


「フレ・・・!?」


「姫の首白くて細いな。」


「ひゃあ!?」



更にはジョージに反対側から首を甘噛みされた。
いきなりの事に反応し、体を仰け反らせる。
ハリーとロンはそんな光景をぽかんとした表情で見てる。
2人に抱きつかれて顔を真っ赤にする私はぎゃーぎゃーと騒ぐ。


「もーっ!
離してよ!!」


「照れるなよ姫!」


「まぁそこが可愛いんだけど。
好きだぜ姫!」


しっかりと抱きしめられ動けない。
しかも好きって言われたかったのはアンタじゃないのに!
なんだか視線が痛いと思ったら双子親衛隊の女の子達の視線。



「わざと!?わざとでしょ!!」


「なにが?」


この女たらしの浮気性で百戦錬磨の双子なら魔法にかかってるフリをしてても不思議はない。
てか、なんだか普段と変わらないじゃないか。
鬱陶しさが倍増しただけだろう。
コイツら双子に惚れ薬は必要ない。
なにを言っても動じない双子にいい加減疲れてきた。
目の前をハーマイオニーが横ぎっていく。



「あ、ハーマイオニー!
助けて、助けて!!」


必死になって助けを求める。
その場面を見てすぐに状況を理解するハーマイオニー。
大きなため息をつかれて冷たい眼差しを向けられる。


「自業自得でしょ?
効果は30分だからそれまで我慢することね。」



「え――――!?」


冷たくあしらわれ、さっさと自分の部屋に戻るハーマイオニーを涙まじりに見つめた。
なんて冷たいの!?
そりゃハーマイオニーの言う通りなんだけど!
同じ部屋だし仲間なんだから助けてくれたっていいのに!
気づけばハリーとロンもその場にいない。
残ったのは私と双子。



「もう絶対魔法には頼らない――!」


静かな部屋には私の虚しい叫び声だけが響き渡ったのだった。