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「・・では一度も外へでたことないと」


舞とキッド、2人してベッドに横並びで座り膝に抱いていたぬいぐるみを抱きしめた。


「今度夜空の空中飛行にお連れしましょう」

「ふふふ・・
ありがとうございます
でも行けない、です」

ふい、と俯かせ、顔を曇らせた。


「激しい運動したりびっくりしたりすると心臓止まっちゃうから」


えへへ、すみません

そう言って目の前の彼女は申し訳なさそうに笑って謝った。


「こちらこそ申し訳ありません」


「いえ、いえっ
怪盗さんは謝らなくていいんです!」


ぶんぶん横に頭をふる彼女を見て慌てて止めれば彼女はまた謝った。


「あの・・怪盗さん」

「なんですか?」

「外の世界ってどんな感じですか?」

「え・・」

「よければ外の世界のお話、聞かせてくださいません?」


笑う彼女はなんだか淋しそうで。
彼女が笑うたびに自身の胸がずきずきと痛んだ。

それから少しの間、たわいもない話で盛り上がった。話すたびにころころと変わる彼女の表情がとても魅力的で。
異変に気がつかなかった。


「・・っ、けほ、」


「お嬢さん?」


「ひゅっ・・ごほ、ごほん!!」


苦しみ、その場にうずくまる。
胸の辺りの服をつかんでいた。
こんな数分ベッドの外にでてただけでもこのようなことになるのか。
自分が思ってたよりも病状が酷いことにキッドは驚いた。
もっと軽いものだと。
彼女は暫くの間咳き込み続けた
どうしたらいいか分からない俺はただ、彼女の小さな背中をさすり続けることしかできなかった。



「・・まだ苦しいですか?」

「・・っ、だいじょうぶ」

「すみません
長居しすぎましたね
そろそろ寝ないと体に毒ですよ」

「けほっ・・いえ、
楽しかったです
またお話聞かせてくださいね」

苦しみながらも笑ってくれる彼女の額に一つキスをおとして、俺はハンググライダーで飛びたった。

また来ます。

そう残したメッセージ。



*真夜中のお話*
(心がぽかぽかあったかい)