ちゅってしてダーリン! | ナノ


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「え〜、では
ふたりに舞空術
つまり空の飛び方を教えます」


長々しい孫くんの説明から始まった舞空術講義。
羚奈は隅に座って様子を見ていた。
なんだか難しそうだがビーデルは大丈夫だろうか?
自分は武道家じゃないからまざれないのが少し淋しく感じる。
なんか"気のコントロール"とか訳が分からない単語が気になってならない。
ビーデルもおなじことを思ったのか悟飯に質問している。


「キのコントロール?
ねぇキ、ってなんなのよ」

「え!?気・・は
・・そうか!
君たちのところじゃ言い方が違うのかな
ほら体の中に隠されたパワーというか・・」


さっきからほんと訳が分からない。
どうやら悟天くんがキってやつを見せてくれるようで
悟天くんの手が光ったと思ったらその掌の先にある岩の壁が粉々に砕け散った。

「そうそう
こういう力のことさ」


「・・・あ、そう・・」


ビーデルと羚奈、2人して驚いた顔をする。

うわぁ・・
夢みてるみたいだよ
普通の人間はあんな手からビームみたいなものでるはずないのに。
さすが孫くんの弟だ。
弟も只者ではないことが判明した。


「・・だったらはっきり言ってそんな魔術みたいな力は知らないわよ!
聞いたこともないわ!
ねぇ、羚奈!?」


「えっ!?
う、うん・・
ご・・ごめん、孫くん
私もこれは未知の世界かも・・」

本当に知らないビーデルと羚奈に悟飯は困った表情をみせる。
キがないと空を飛べないのかと悟飯に問い詰めるビーデル。
たじろぎながらも大丈夫だと言う悟飯。
2人を見ながら羚奈の心はまた痛めていた。

・・私も武道がやれたらあそこにまざれたのに。
このままじゃどんどん2人の距離は縮まってしまう。
そんなことになったら2人の中にはいる隙はあるのだろうか。

・・なんて考えてるけどこの気持ちがなんなのか分からない。
前みたいな頭痛や吐き気はないのだけど


(・・胃薬持ってくればよかった・・)


「お姉ちゃん大丈夫?」


声がした方に顔をあげれば悟天くんがいる。
そこらへんに咲いていたであろうひっこぬいた花を、羚奈に差し出す。


「あげるー」


「ありがとう」


こんな小さい子に心配させちゃいけない。
花を受け取りながら笑ってみせる。


「大丈夫よ」


その言葉と笑顔に安心したのか、悟天はまたどこかへと遊びに行ってしまった。
小さなことだけどすごく嬉しくて、心が穏やかになった。


「羚奈さん」


「っ!孫く、ん」


「・・え、」


いきなりで顔は真っ赤。
そんな羚奈につられて悟飯も赤く染まる。


「「・・・・・・」」


2人して黙りこんでしまう
そんな中ビーデルの声が響き渡った。


「羚奈!
お昼みたいよ
いきましょ!」


「うん・・」



家に戻り、席へと腰かける
できたての湯気が鼻を通り、良い匂い。
一口、口にいれればどこの料理よりもずっと美味しかった。
それからビーデルの家の話になって部屋の数に驚いてた。

それもそうか。
ビーデルの家ってめちゃくちゃ広いんだもん。



「いつ結婚すんだ!?
おめえたち」


「ぶっ」


なんでかそんな話になりチチのあまりに突然のセリフに悟飯は口にいれてたものを吹き出してしまった。



「ビ、
ビーデルは結婚しません!!
変なこと言わないで!」


いきなり立ち上がった羚奈を変な目で見る。
羚奈の顔はいつもよりも真剣で少し赤かった。

「羚奈さん?」


「な、なんでアンタがそんなこと言うのよ・・」


「・・な、なんでって・・
えと、その・・っ」


自分に集中してる視線に耐えられない。
なんでこんなこと言ってしまったんだろう。


「・・・なんでもないよ」

そう小さく言い、椅子へと座れば自分の言った言葉に正直吐き気をおぼえた。

お昼を食べ終えて再び再開する。
キをだすことができたのか楽しげな声が聞こえる。
かなり時間がたっただろう
ビーデルはたった1日で少し浮けるようになったけど一番驚いたのは悟天くんだ
もう自由自在に飛び回れるようになってしまっているそれが納得いかないのかあれぐらい飛べるようになるまで通うと言い出した。


「また明日も来るわ」


「え!?
な、なんで!
もうほとんどできたも同然じゃない・・
あとは自分だけでもじゅうぶん・・」


「気のことをもっと知りたいわ
それとも私がいたら迷惑!?」


またもビーデルに押されて負けてる。


「い・・いや!
そんなことないけど」


「じゃあ明日ね」


カプセルのスイッチを押し、ヘリをだす。
羚奈もヘリに乗ろうと歩きだした。
悟飯はビーデルを呼び止める。


「ビ、ビーデルさんの髪の毛だけど・・
もっと短くした方がいいと思うよ」


「え・・!?

ショ、ショートヘアの方が・・悟飯くんの好み?・・」


そう自分の髪の毛をいじりながら照れたように言うビーデル。



「そ、そうなの・・?
孫くん」


羚奈も気になってつい聞いてしまった。
自分も長いもんだからかドキドキしてしまう。


「えっ!?
い、いや
好みとかじゃなくて試合するんだったら短い方が有利だと思ってさ
ほら長いと目にかかったり相手に髪の毛つかまれたりして・・」


どうやら勘違いだったみたいだ。
ちょっと期待してしまった私たち。
ビーデルもなぜだか顔を赤くさせた。
やっぱり期待がおっきかったんだろうな



「うるさいわね!
ほっといてよ!
そんなこと私の勝手でしょ!!」


いままでにないビーデルのお怒りモードに羚奈までもが驚いていた。
勢いまかせにヘリへと乗り込むビーデル。


「羚奈さ、」


「じゃーね、孫くん
私はもう来ないから頑張ってね!
大会で会おう!」


羚奈が笑顔でそう言えば悟飯の目が少し見開いた気がした
助手席へと乗ろうとする羚奈の手を掴み、抱き寄せられる。
ぎゅ・・と抱きしめられる力が強まった


「あ、の
孫くん・・?」


「・・来ない、なんて言わないでください」


「え・・?」


さっきから心臓がうるさい悟飯の体は思ってた以上に逞しく、なんだか安心した



「僕だけじゃビーデルさんの相手は難しいです」


「・・・・・・

は・・?」


予想外な悟飯の言葉。
この行動にさえも期待してしまっていた自分が恥ずかしい。
小さく体を震わせる羚奈を不思議に思う悟飯。

「あの、羚奈さん?」


「孫くんのばかー!!」


悟飯の手を払いのけ、振り向き様に叫びヘリに飛び乗る。
すぐさまヘリは飛び立っていった。
悟飯はぽかーんとした表情のまま見送った。


「ねぇ、にいちゃん
お姉ちゃんたちなんで怒ってたの?」


「わ、分からない・・っ」

本気でビーデルたちが怒ってた理由に気が付かないでいる悟飯。



「あーあ、孫くんって鈍感」


帰りのヘリの中、頬杖つき窓から外の景色を眺めながら羚奈は呟いた。

もう1つ分かってしまった
孫くんは只者ではない以外に超鈍いんだということが
またしてもお礼を言い忘れたことに気がつく。

まぁ、仕方ないから明日も行ってやるか、なんて頭では考えつつも顔はニヤけっぱなしな羚奈だった