ちゅってしてダーリン! | ナノ


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次の日。
体調はすっかりよくなりお礼を言おうと思って屋上で悟飯を待っていたのだが、なかなか来ない。


「・・・なんで?」


いつもの方角にサイヤマンの姿は、どこを見渡しても見えなくて。
いつもならとっくに到着している時間なのに。
それともビーデルにバレたから来るのが気まずいんだろうか。


「それはない、かな?」


なんてあははー、と笑ってみせる。
ガラっと扉が開く音がして振り向けばビーデルがいた。


「おはよう、羚奈
悟飯くんは?」


この様子だとビーデルも悟飯に用事があるのだろうか。
嫌だな、なんて思ってしまった。
サイヤマンのことは悟飯との2人だけの秘密だと思っていたのに。
ちょっとだけ浸っていた優越感。
ビーデルにはなくて私だけの特別。
それがこんなにも脆く終わってしまった。



「おはよ、ビーデル
孫くんはまだだよ」


「そう。」


「昨日はありがとう。
運んでくれたのビーデルなんだってね!
孫くんから聞いたよ」


そう言えばビーデルは近づいてきて、デコピンをくらわされた。


「ぴぎゃ!」


痛々しい音がして、次にビーデルのため息。
涙目で見る羚奈に指をたてて声をはりあげる。


「ったく!
倒れる程具合悪いなら誰かに付き添ってもらいなさい!」


「す、すみませ・・・!」



震えながら未だ痛む赤く晴れ上がった額をさすりながら謝る。

なんだかんだ言っても羚奈はそんなビーデルが大好きなのだ。
いつまで待っててもこないから仕方ないので教室に戻ることにした。
その途中小耳に挟んだのだが、休学届けをだされたことを知らされた。
羚奈とビーデル、2人して同じ顔をして驚いている。



「信じらんない・・!
空の飛び方教えてくれる約束は!?」


「え?
ビーデルそんな約束してたんだ!」


体を怒りで震わせているビーデルにたじろぐ。
悟飯もこれでお終いか、なんて思ってしまった。
でもなにも言わず勝手に休学届けだしちゃうなんて。
冷たい!

よく考えれば一言くらい言ってってもいいんじゃないのか。


「あれっ!?
ビーデルどこ行くの!?」

怒りが滲み出てるビーデルは教室をあとにする。
羚奈はそんなビーデルをおいかけた。

あれ、これって・・

行く通路を見ればさっきまで行ってた屋上だった。
屋上へはいればビーデルがカプセルからヘリをだしてるところで。
嫌でも想像することができた。


「もしかしてビーデル・・」

羚奈のこの言葉にビーデルはにやりと笑う。
あ、やっぱり。
悟飯の家に行く気満々な彼女はなんて行動が早いんだ
もう操縦席に乗り込んで飛びたとうとしている。
羚奈は慌てて助手席へとまわり、窓を叩いた。窓が開けば顔を覗きこませる。


「なに?」


「ビーデル、ビーデル!
私も孫くんの家行きたい!!」


「はぁ?」


「別に邪魔するわけじゃないから!
ねっ!?」



扉の鍵が開いてたみたいで勝手に助手席に乗り込み、シートに腰をおろす。



「まだお礼言えてないから言いたいだけ・・」



そう言いながらシートベルトをしめる羚奈の姿を見て呆れ顔。
この頑固さはビーデル譲りだ。
諦めたのかエンジンをかけはじめる。
音を聞き、羚奈は小さくガッツポーズをした。
そしてそのまま宙に浮き、2人で悟飯の家へと向かう。

その頃の悟飯はというとサイヤマンの姿であちこち飛び回っていた。