ちゅってしてダーリン! | ナノ


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「・・・孫くんがトイレにいったきり戻ってこない」

「あはは!
お腹壊してひきこもってんのよ。」



ぼそりと呟いた羚奈の言葉にイレーザは笑いながら言う。

うーん・・
笑っちゃだめだと思うよ。

悟飯がトイレに行って15分位たった。
その前にビーデルが隣のランドセルタウンで強盗があって逃走中の男を捕まえにいき、それと入れ違いにでていったに等しい。
イレーザ、シャプナー、悟飯の3人でビーデルの強さについて語ってたみたいなんだけど、ミスター・サタンに匹敵する実力の持ち主だって聞いたとたんなにやら血相をかえて驚いた顔をしていた。
それから大声で"便所いってきていいですか"なんて言ってでていったのだ。
あのマジメな悟飯が授業の途中ででていくなんてありえない。
羚奈はなんとなく思っていた。
きっと悟飯は嘘をついてまでビーデルを助けに行ったんだと。
いつのまにそんなに親しくなっちゃったのかな、と少し寂しげな表情を見せた。
昔からビーデルとは一緒にいて。
強くて、可愛くて、羚奈はそんなビーデルが羨ましかった。

・・・なんだろう
胸が苦しい。
昨日まで元気だったのに。
2人が一緒にいるんだって思えばきゅうってする。
きっとグレートサイヤマンの姿だからビーデルは分からないと思う。
ちょいちょい、とイレーザの人差し指があたり、彼女を見る。



「ちょっと、顔色悪いわよ?
大丈夫?」


「なんだ。
勉強そんなに嫌なのか?」


「それはシャプナーでしょ」


頭を抱えてため息混じりにそう言ってみせる。
シャプナーは引きつった笑いをしていた。
少し額が汗ばんでいて、ずきん、ずきん、と頭が痛む。
それに胃がムカムカしてキモチ悪い。


「・・・先生、気分が悪いので保健室行ってきてもいいですか?」



小さく手を挙げ、俯きざまに言えば心配するイレーザの姿が目に映る。



「ついていこうか?」



「・・・ん、大丈夫。」



今は1人がいい。
誰かと一緒なんて耐えられない。
よろよろと教室をでて、保健室へと向かう。
自分でも分かるくらい足はふらついていて、目の前が霞んで見える。
あまりの立ちくらみにその場に座り込み、頭痛と吐き気が同時に羚奈を襲った。
胸のあたりの服を掴み、小さく丸まる。



「っ!羚奈!!」



聞き慣れた声が聞こえた気がしたけど、羚奈は意識を手放していた。




「あ、目覚めました?」


伏せてた睫毛を開かせて、自分の顔を覗き込んでいる人物を確認する。



「・・・・・、孫、く」



「よかった!
先に戻ってるはずのビーデルさんがいなくてどうしたのかな、って思ってたら羚奈さんが倒れたって聞いたから・・」


「・・・心配してくれたの?」



はっと我にかえり壁にかかってる時計に目をやる。
時刻は5時近かった。



「・・・!
そっ孫く、こんな時間までいてくれたの!?
帰るの遅くなっちゃうよ!」


羚奈が慌ててそう言えば優しく笑う悟飯。



「大丈夫です。
グレートサイヤマンで飛んでけば早いですから。
心配なんでもう少しついてます。」



「・・・」



照れて赤くなった顔を半分シーツで隠す。
あの最後に聞こえた声は悟飯だったのだろうか。



「ねぇ、ここまで運んでくれたのって孫くん?」



「いいえ、ビーデルさんです」



「ビーデル?」



「はい。」


そうだったんだ。
明日お礼言わないといけないな。



「あの・・それより羚奈さん」


「ん?」


「ビーデルさんにサイヤマンが僕だってバレてしまいました。」


「・・・・ふーん・・・、
えっ!!?」


なにげなく聞いていたが、さりげにすごいことを言われた気がした。
悟飯は渇いた笑いで笑みをこぼしている。



「ほんと孫くんって嘘つくの下手なんだね・・」


「自分でもそう思います。」

しかも黙ってる代わりに1ヶ月後に行われる天下一武道会に出場することになったらしい。
なんともついてない男だ。


「でるのもいいけど、ケガしないでね。
私、応援に行くから。」



「ありがとうございます。」


お互い顔を赤くして笑い、見つめあう。
その日は結局悟飯に家まで送ってもらったのだった。