ちゅってしてダーリン! | ナノ


←back
ヒーローなんてテレビの中だけだと思ってた。


「お疲れ様、孫くん!」


背後から軽く肩を叩けば、体をびくつかせて勢いよく振り向き、羚奈との距離をとる悟飯。
ちょっと、ちょっと。
その反応はないんじゃない?
傷つくなぁ、もう。
ただ今グレートサイヤマンとしての仕事を終えたところ。
毎日ご苦労様、ということで声をかけたというのに。悟飯は羚奈だと気づくと警戒した顔を緩める。



「な、なんだ・・
羚奈さんか!」


え・・、もしかして警戒してた?
ただのクラスメイトにその態度はないだろうに。



「驚かしちゃってごめんね
買い物してたらサイヤマンの姿が見えたから、さ。」

やんわり笑い、悟飯の方を見る。



「そうだったんですか、
こっちこそすみませんでした。」



あ、謝ってくれるんだ。
なんて律儀な人だろう。



「その時計みたいなもの便利だね。
それで変身するわけだ。」


「・・・わっ!ちょっ」



悟飯の手をとり腕についてるものをまじまじと見つめる。
そんな羚奈の行動と間近に来たことに驚いたのか悟飯の顔は真っ赤だった
あらあら、こんなんで真っ赤になっちゃって。



「かーわいい〜」



そう言ってくすりと笑えば焦りながら悟飯くんは私から手を離す。
2人並んで歩けばまるで恋人同士みたい。
なんて思い、"それはないな"とまた笑う。
羚奈はあることに気づくのだった。



「ね、後ろで木に隠れてるのってビーデルだよね?
孫くん何かしたの?」


後ろを振り向かずひそひそと話をすれば悟飯は焦ったように返事をした。



「いや〜・・
あの野球の一件以来なんでか後をつけられるようになっちゃって。」



あはは、と笑うが羚奈には笑いでとれない。
もしかして、と思いまた問いかけた。



「もしかして孫くん疑われてるんじゃない?
グレートサイヤマンだって」


「え!?
そ、そんなまさか・・」



気づいてないことにびっくりだよ。
しかしそうでもなければ尾行されてるなんてありえない。
羚奈は密かに心の中であのボールをくらっても平然としてた件で怪しまれてるんだろうとすぐに分かった。



「すみません、羚奈さん
僕先に行きますね!」


「え!?
ちょ、孫くん!」


それだけ言えば悟飯は一瞬でその場から姿を消してしまった。
まるで神業。
やっぱ人間じゃないなーなんて思ったり。
前や後ろ、左や右、あちこち見回してみるけれど悟飯の姿はない。
空を見上げればビルの屋上にいるではないか。
そこで手をふる悟飯に空いた口が塞がらないでいる。すぐに後ろから悟飯を追いかけてきたビーデルが追いついて、声をあげた。



「あっあれ!?
羚奈、悟飯くんは!」


「え、えと・・」



ものすごい剣幕で迫られ、少々たじろぐ。
ぎゃんぎゃん騒ぐビーデルはなんとも小煩い小動物のよう。



「孫くんならここで別れたよ。
用事あるんだって。」



ビーデルは納得いかない顔をしていた。



「・・・ビーデルはなんでこんなことしてるの?」



「悟飯くんは只者じゃないわ!」


ビーデルの言葉に共感してしまった。
悟飯は目立たないようやってきた行動みたいだったけど逆効果だったみたいだ。
むしろ目立ってると教えてあげたい。

それから暫くしてある事件が起こる。