ちゅってしてダーリン! | ナノ


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ある日。グレートサイヤマンの姿で街中を飛んでいたときのことだった。すぐ真下で女性の悲鳴が聞こえる。なんだろうと見てみれば、人相の悪い男二人と手首を捕まれ身動きがとれないでいる女の子が助けを求めている。


「離してください!」
「あんたがぶつかったせいでけがしたんだ責任とれよ」
「まあ。横暴な方ですわね。ぶつかってきたのはそっちのほうじゃなくて?」
「治療費払うまではなさねえ」

、と相手の男は自分に非は無いと主張し、さらに治療費をもとめてきたのだった。彼女はただ相手を見つめ黙ったまま。震えて声がだせないのだろうか?ここで僕、グレートサイヤマンの出番だ!ぎゅ、と拳を握り、彼女のもとへむかう。


「これで足りますか?」


なにを思ったのか彼女は札束をとりだした。それに男は目を丸めてる。


「なんだ。お前、お嬢様か」
「兄貴ラッキーですね」


お金をそのまま持っていこうとする。僕は心の中で叫んだ。待て、と。口にださないといけないことは分かっていたが彼女の行動に心底驚いたのだ。まさか本当に渡してしまうとは。だがなぜあんな札束を持ち歩いている?いや・・いまはそんなこと考えるより



「まてー!グレートサイヤマンがいる限り悪は見逃さないぞ!」
「な、なんだ!こいつ!?」
「兄貴!こいつ変人で噂のタイヤマン!」
「サイヤマンです!」


なんか前にもこのやりとりをした気がする。とりあえす今はおいておこう。今は彼女を助けるのが先だ。僕は闘う構えをとる。、が


「あ、あれ?」


相手がいなくなってた。彼女は苦笑をうかべて「あちらへ行ってしまわれましたよ」と説明してくれた。僕の顔は見えてないから助かったが僕は今最高に恥ずかしい。と同時に情けない。かっこよく助けるはずだったのにまさかこんな。まだ決め台詞どころかポーズもとってなかったのに。


「あの」


頭でいろんな思考が目まぐるしくまわる中彼女が声をかけてくる。


「助けていただきありがとうございました。今度お礼をしたいのですが」
「そんな・・!お礼なんていいですよ!」
「よくないです!」
「・・じゃあぜひ、」

彼女の気迫に負けてしまった。・・それにしても可愛いひとだなあ。なんとなく声をかけたくなる気持ちが分かってしまった。ふわふわの髪の毛にぱっちりとした目。凛とした雰囲気。何度も彼女を見てしまう。


「タイヤマンさんは・・」
「サイヤマンです!」


彼女の間違いに慌てて訂正する。なぜみんなタイヤマンと間違えるのだろう。名前、改名しようか?


「・・では、サイヤマンさん。お顔を拝見してもよろしくて?」

ヘルメット越しに見える彼女の可愛らしいきらきらとした笑顔。優しい雰囲気に、こんなヘルメット越しじゃなくて直に見たいと思った僕は少し抱いた期待と共にそっとヘルメットをはずした。