ちゅってしてダーリン! | ナノ


←back
転校生がやってきた

こんな時期になんて珍しくて、私以外の人もどんな人が来るんだろうって朝からずっとこの話題。


「孫です
孫・・悟飯・・・」


「悟飯だってよー
変な名前」


教室へと入ってきた少年が挨拶をすればそんな会話が聞こえた。
実は羚奈もそう思ったのは内緒だ。
いまどき名前と苗字が別れてるのも変だし、見たとこなよなよしてて頼りなさそう。


「ねーねー、羚奈!
あの子結構可愛くない?」


「顔・・、はまあそこそこよね」


「は?」


イレーザは目をぱちくりさせてる
席をたつ羚奈に理想高いのはいいけどほどほどにね、と言われて席をたった。

(そんなに理想高いかなー・・・)


ちらりと悟飯を見れば教科書がまだないみたいで誰にも借りられず困っているようだ。
その場で少し考える。
すぐに悟飯のもとへと向かった。


「はい」


「え・・」


さしだされた教科書と羚奈を交互に見る。
いきなりのことで驚いてるようだ。


「教科書、まだないんでしょ?
よければこれ使って」


「でもそれじゃ、・・」


「教科書なくて困る、なんて気遣いは無用よ
私、あなたと違って借りるのに困るほど友達少なくないし」


「・・・」

きょとんとする悟飯にしまった、と後悔する
転校初日なんだから友達がいないのも教科書だってまだ届いてないから持ってないだけなのに。
嫌みたらしく言ってしまった。


「あ・・あの・・・っ」



「ありがとうございます」

謝ろうとすれば笑顔でお礼を言われた。
酷いいい方をしたのはこっちなのに。


「今日からよろしくお願いします」


「・・よろしく
羚奈です。」


「羚奈さんか
いい名前だね」


これが悟飯と初めてかわした会話だった。





++++++++


「あー・・
そんなことあったね」


懐かしみながら昔の話をすればまったく覚えてない様子の羚奈にショックをうける。


(そんなことだろうと思ってましたけど・・)


少しくらいは、と淡い期待を膨らませてた自分が可哀想に思えてくる。
初めて会った日の羚奈に比べたら今は優しくなったものだ。
羚奈を横目で見ればいつもと変わらない笑顔で笑ってる。

悟飯は一つ、小さなため息をはく。

教科書を渡してくれた時の君の笑顔が可愛くて一瞬だけどきっとしてしまった、というのは秘密にしておこう。



・・・だって、



僕だけ悔しいじゃないですか。