ちゅってしてダーリン! | ナノ


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「パパせっかく日本に来たならゆっくりしていけばいいのに・・」


「パパもそうしたいんだけどね
むこうでやりかけの仕事が沢山あるから」


そうにっこり微笑む。
すぐ聞こえてきたのは大きな携帯の着信音。
あまりに大きすぎて瞬時に耳を手で覆った。


「な・・なに・・?」


「ああ、ごめんごめん」


あちこちにあるポッケに突っ込み、携帯を探り当てスイッチをおす。
音はぴたりと止んだ。


「会社の人・・?」


「ん?まあそんなとこ」


そう微笑む笑顔はさっきよりぎこちなく感じた。
羚奈は疑いの眼差しをおくる。


「もしかしてパパ・・!」

「・・・・」


「やっぱり!
仕事ほったらかしにしてきたのね!?」


「い、いや・・」


「も――!
あれほど病院の人や研究員の方に迷惑かけないでって言ったのに!
娘として恥ずかしいわ!」

「・・・すみません」


羚奈に言われてしょんぼりする。
ふうっとため息を吐く。


「ほらほら!
早く行かないと飛行機乗り遅れちゃうよ?」


「羚奈・・」


「行ってらっしゃい
お仕事頑張ってね
パパ・・」


いままで見せた笑顔の中で柔らかな笑顔。
ぎゅうっと抱きしめられて力が強かったのか苦しかった。
それにいくら人がいないからって改めて抱きしめられると気恥ずかしくて、羚奈の顔が赤くなる。


「行ってくるよ
羚奈・・」






あれからすぐにパパと別れた。
まだ後少しだけ海外での仕事が残ってるらしい。
そして羚奈は一足先に会場へと戻った。


「あれ誰・・?」


キビトと知らないツンツン頭の光ってる人がリンクにあがってるのを見て誰だか確かめようと目を細めた。顔をとらえ細めてた目を見開かせた。


「・・孫くん?」


絶対そうだ。間違えるはずがない。

そういえば先ほどもそうだったが悟飯が金色に変身してしまっている。
サイヤマンだとは知っていたがあの噂の金色の戦士までもの正体が悟飯だったなんて。


「さあ
超サイヤ人になってやったぞ
これからどうするんだ
このまま闘えばいいのか?」


姿だけでなく口調までもがいつもの悟飯と違う。
少し怖かった。

ヤムーとスポポビッチが悟飯に襲いかかるのを見て、どくんっと脈打ち、目の前が一瞬だけ真っ暗になる。

「きた!」


シンが叫ぶ。
2人が襲ってきたことにより身構える悟飯。


「なんだきさまら!」


「はっ!」


シンが手をかざして、気合いをこめれば悟飯の動きがぴたりと止まった
それを見逃さずスポポビッチが悟飯の身体を押さえ込むとヤムーがなにかを悟飯の身体につきさした。


「あっ・・
あんにゃろ・・!」


「言ったでしょ!
手をださないで!」


いまにも飛び出しそうなクリリンに制止をかける。


「シンさん
なにを・・!」


「羚奈さんごめんなさい
少し悟飯さんを利用させていただきました

・・・!?」


羚奈の方へ振り向きざまにそう言えば驚いた
羚奈の身体も金色に光っている。


「羚奈さんあなた・・・っ」


「え?
あ、あれ!?」


本人も光ってることに驚いてる。
あちこち見渡しても光ってることは事実。


「おい、ヤムー
あれを見ろ!」


「あれは・・!」


2人の視線が変貌した羚奈をとらえた。


「・・・というわけです
お辛いでしょうが許してください」


説明されるが羚奈にはどうでもよかった。


「全然分かりませんっ
なんでみなさんも言うことを聞いて・・
孫くんパパだって・・
私は嫌です!」


「お待ちなさいっ
羚奈さん!」


悟飯のもとへ走る羚奈をシン・・界王神は止めるが羚奈は聞く耳をもたない。


「あっ
羚奈さんダメですよ
サイヤマン選手が失格になってしまいます」


「そんなことどうでもいいです・・!
孫くんがっ」


リンクに向かえば当たり前のように審判に止められた
こうしてる間にも悟飯の顔色が悪くなっていって。
死んじゃうんじゃないかってそればっかりが頭を支配してる。
嫌な予感がしてならない中、自分の影が2つの影と重なるのが分かり、羚奈は顔をあげた。
そこにはヤムーとスポポビッチの2人がたっている。

「な、なに・・?」


「にひっ」


スポポビッチが妖しげな笑みを零す。
その声色に背筋に寒気が奔った。
羚奈を見てたかと思えばヤムーは先ほど悟飯に刺した道具をかまえて飛びかかった。
いきなりで避けきれなかった羚奈は堅く目をつむる。
だが、金色の光は強まり、ヤムーをはじきとばした。

「うそ・・
羚奈・・?」


それを見てたビーデルは呆気にとられた。
変身した悟飯にもだが今の羚奈はなんだったのだろうか。
飛ばされたヤムーはゆっくりと起き上がった。


「そうか
やはりお前がバビディ様が言っていた魔神ブウをと繋ぐ鍵、か」


「・・・?」


なにを言っているのかさっぱり分からない。
だが遠くでも界王神には羚奈たちが話してる内容が聞こえているようで


「・・・!
やはりそうか!
みなさん!羚奈さんを奴らに渡してはいけません!」

「え・・・!?」


スポポビッチとヤムーはにやりと笑い、羚奈に襲いかかった。


「・・・ッ!?」


ヤムーが羚奈の腹に一突きくらわし、気絶させる。
羚奈はヤムーの腕へ倒れこんだ。
羚奈の身体を包んでいた光が消える。


「・・ふむ、
触れはするようだ」


「こいつも連れていくのか?」


羚奈を担ぐヤムーにスポポビッチは問い掛けた

「繋ぐ鍵だ
バビディ様がお喜びになられる」


「ははー
いがいとカンタンだったな!」


なにがなんだか分からない審判にビーデル
観客もぽかんとしてる。


「な、なにがどうなってるのよ・・
なんで羚奈が・・っ」


「羚奈さ・・」


歪む視界の中、羚奈の名を呼ぶ悟飯
目の前でおこってることなのに身体が動かなかった
奪われてはいけない、と言っていた羚奈を奪われてもまだなにもするな、と言う界王神


「羚奈さんのことは仕方がありません。
とりあえずこれからあの2人に気付かれないようこっそりあとをつけます・・
もしよろしければわたしと一緒にあなたたちも来てください
とても助かります・・」


そう言って2人のあとを追いかけていった


「ど・・
どうするよ、悟空・・」


「オラはついて行くさ!
羚奈のこともだが、こうなったわけをぜったい知りてえからな!」


強いやつと闘える気がする、悟空は楽しげにそう言った。
いままで色々な敵が現れ、死にそうな思いをしてきた
これから始まることもとんでもないことが起こることは誰もが予測できた。


新たな闘いの幕開けだ。