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悪い悪に捕まったお姫様は、かっこいい王子様に助けられるの。王子様は言いました。私だけのお姫様になってほしいと。だけどそれは叶わぬ願いとなってしまいました。王子様は戦いの途中で命をおとしてしまうのです。お姫様は泣き続けました。声が枯れるほどに。自身が壊れてしまうほどに。こうしてお姫様も自身を殺しました。
それがわたしの知ってるお伽話の一つ。
「ん・・?」
おとしていた瞼をゆっくりと押し開ける。霞んだ視界がだんだんとはっきり見えてきた。自分は寝ていたのだ。そのおかげで頭がついていかない。暫くぼうっとしていれば
「あ・・!」
思い出した。寝ていたのではない。気絶していたのだ。
「確かヤムーって選手に一発くらわされて、それで・・」
ここはどこだろう。気絶している間に連れられて来られた場所は随分と変わった所だった。目の前にあった扉が開く。
「なになに〜。やっと起きたの?
まったく、随分と無駄な時間すごさせてくれたよね」
「え・・!?」
なに?これは人なの?宇宙人のような外見に
「きもちわる・・っ」
羚奈はそう呟いてしまう。相手の目つきが鋭くなった。否。一瞬相手の手が伸びたように見えた。その手が羚奈の細い首を締め上げ、床に叩きつけられる。
「なんか聞こえたね。”きもちわるい”・・?
”ここ”から聞こえたんだけど」
「うあ・・っ!」
首に圧力が一気にかけられる。ぎぎぎ・・といまにも骨が折れてしまいそうな奇怪な音をあげてる。あまりの苦しさに身を身をよじろぐ。まったく体重をかけられているわけでもないのにこの力の強さは一体なんなの。
「ひゅ・・、あ・・う・・」
ささやかな抵抗でかけていた手は、ゆるゆると力を失ってく。
変な咳とままならない呼吸。
ひーひー、と擦れ擦れしかでない声。
滲む視界の中目にうつるのは歪んだ表情。
「バビディ様。それ以上はそいつはつかいものにならなくなります」
「おっと。そうだね。」
「げほ!・・げ・・げえっ・・!」
「危ない、危ない。こんなことで魔人ブウを復活させることができなくなったなんてバカらしいよね。」
呼吸を許された羚奈は空気が上手く吸えないのか変な咳ばかりがでた。
目尻からは涙が滲みでている。身体に力がはいらず動けなかった。
「でもほんとにこいつがブウを復活させるために必要な鍵なの?」
「あの話が本当であれば・・」
「ふーん」
見下ろされる目にぞっとなった。
(孫くん助けて・・!)
++++++会場++++++
「むんっ・・」
「・・!?」
悟飯の背中に手をかけたキビトが力を込めれば先程まで動くことができなかった悟飯の身体は何事もなかったかのように起き上がった。その光景に悟飯自身も、ビーデルも、タンカのために呼ばれた救急隊も目が飛び出るかというほど驚いていた。
「ふう・・もう動けるはずだ」
「あなた一体・・」
「話は後だ。いまは界王神さまたちに追いつかねば」
「そうですね!早く行きましょうっ」
「待って!」
「・・ビーデルさん?」
飛び立とうとしていた悟飯は呼び止められる声に振り向いた。そこにはビーデルが立っていて。口を開いた言葉からは予想していた言葉が洩れた。
「私も行くわ!」
「ダメだ・・!危険すぎる!」
「羚奈のことだって心配だもの!
邪魔はしないわ、ただついていくだけ・・!」
「・・危なくなったら逃げるって約束できる?」
こくん、と頷く。そんなビーデルを見て三人は飛び立っていった。
当然会場はいなくなった選手たちに戸惑いを隠せない。もちろん客席で見てたブルマたちも。
「なになに?どうなったわけ?」
これから起こりうることが、とんでもない事件になることを、まだ知らない。
「はるか昔、女神のように美しいアフロディテ様がおりました。彼女はどんどん魔神ブウにとりこまれていく他の海王神のかわりにブウを封じ込め命を落としました。結婚されてすぐのこと・・子供もおりました。」
「アフロディテさまは自身の全ての力を使って魔神ブウを封じこめました。
あとに取り残される子供を酷く心配しておられました。」
「つまりブウを復活させるには汚れていない巨大なエネルギーと、同じ巫女の血統である羚奈さんのもつ強い力が必要・・羚奈さんの力を重ね合わせることによって鍵で閉じられていた扉を開けるのと同じ原理・・」
「鍵の存在である巫女様。それが羚奈さんなのです。」「おそらく羚奈さんもすべての力を使うことになるでしょう。」
「それじゃ羚奈は・・」
「ええ、死にます」