ちゅってしてダーリン! | ナノ


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あの後2発くらい、場外負けになるはずだったビーデルは悟飯に教えてもらった舞空術で難なくそれを逃れた。


「いいぞ、いいぞ!
僕が教えてあげたんですよ
舞空術!」


「・・いま落っこちてたほうがよかったかもしれねえぞ・・」


「え?」


「やっぱりスポポビッチってやつは変だ・・
あんなにダメージをくらってるはずなのにへっちゃらすぎるし、生気そのものが感じられねえ・・」


「ど・・どういうことですか、それ・・」


「さあ、そこまではわからねえ・・」


「・・っ
ビーデル、もうやめて―――・・・!」


悟空と悟飯の話に不安でしかたなくて、蹴りをしかけたビーデルの姿をみながら羚奈は叫んだ。
変な音とともにビーデルの蹴りはスポポビッチの首へとくいこむ。


「!!」


スポポビッチの首は今の蹴りで首の骨が折れてしまった。
会場は騒めく。
殺してしまった、と。

だが。


スポポビッチは自分で首を元に戻したのだ。


「ななっ
なんとクビがもとに戻った――っ!!」


「ぬひっ」


「な・・なに・・
こいつ・・・」


次の瞬間スポポビッチの拳がビーデルの顔面に炸裂した。


「あっ!!」


「うぐっ・・
うう・・」


殴られたとこをおさえ、手の隙間から血が滴りおちた
それを見て羚奈の心がざわざわと揺れる。


「悟空のいうとおりだ
もう降参したほうがいい・・
ぜったいふつうじゃないぜ
あのやろう・・」


「がああ―――っ!!」


迫りくるスポポビッチ。
繰りだされる拳を避け、空へ逃げる。


「お―――っと
ビーデル選手、また飛んだ―――!!」


空へ逃げたのは疲れがたまってるから。
絶対に負けたくない。
少しでも時間をかせいで回復したい。


「それでいい!
一旦空に逃げて体力の回復を待つんだ!」


「それだけはだめ!
ビーデル!」


羚奈の叫び声よりも叫んだ内容に驚いた。


「羚奈さん・・?」

悟飯が羚奈に気をとられているあいだにもスポポビッチも空を飛んだ。
相手も飛んだことにより相当動揺しているビーデル。
ビーデルより真上に飛び、ゆっくりと手をかざした。

「・・・!?」


「はあっ!!」


その途端になにもされてないのに身体にものすごい衝撃が襲いかかった。


「ぎっ!!」



身体中に奔る痛み。
相当ダメージは大きい。
なんとか床に踏張って着地した。


「う・・
うぐぐ・・・っ」


続けて少ししてからスポポビッチが降りてきた。


「あ・・
あのやろう・・
たいした威力ではないがき、気功波を・・!!」


クリリンがそう言えばベジータが呟く。


「ちがうな・・
殺せば負けになってしまう」


「だからあいつわざと弱く撃ったんだ
許せない・・・!」


それに続けて羚奈も呟き、ぎゅっと手を握り締める。
まるで羚奈にはこうなることが分かってたみたいな口ぶりだった。
未来が見えるような、そんな感じ。

スポポビッチの反撃が始まり、身体に相当ダメージをくらってしまっているビーデルは拳一つ動かす暇がないくらい攻撃をうけてしまっている


「がふっ!」


「ち、ちくしょう
もうやめろ!
ビーデルちゃんが死んじまう・・・!」


痛々しい姿に観客たちが騒めきだす。
羚奈も耐えられずにいた。


「ビーデル!
降参して!」


「羚奈さんの言うとおりだ!
もうじゅうぶん頑張った・・・!
降参しろ!」


「わ・・
わたしもそう思います
降参したほうが・・」


羚奈と悟飯の言葉に同意する審判もビーデルに告げる。
だがビーデルの性格からすれば降参をするはずがなく拒否するのだった。


「はあっ!!」


最後に見せたささやかな小さな抵抗。
放った蹴りはほとんど威力がなかった。
これだけ攻撃してもまったくの平気さにもうどうしていいか分からなくなってしまい、ただその場に立ち尽くした。
スポポビッチの荒い息しか聞こえない。


「きゃっ!」


瞬間、髪を捕まれ、ビーデルの顔面にスポポビッチの膝蹴りが炸裂した。
音からして、ただごとでは終わらない。
顔全体腫れあがり、歯がかけた無惨なビーデルの姿。

「が・・がはっ・・・」


「ひ・・ひでえ・・!
なんてことを・・・!!」

スポポビッチはビーデルをリンクに投げ捨てる。
その姿を見て怒りにふるえる悟飯は気を膨らませた。

「お、おい 悟飯
おちつけ・・!
だいじょうぶだ
死にゃあしないさ!!」


だがスポポビッチの攻撃は終わらず、ビーデルの頭を踏みつけた。


「ぎゃ・・あ!!」


「ひいい・・!
や、やめろ
もうやめてくれ〜〜!」


我慢の限界だったのかおさえきれなかった悟飯はとうとう超サイヤ人へと変身してしまった。


「お・・おのれ・・
もう許さんぞ
あのくそ野郎・・!」


「おっおいっ
そりゃまずいぞ
おちつけ悟飯っ」


「いやだっ!」


怒りにまかせて引き契ったマントを投げる。


「悟飯」


「止めても無駄ですよ!
お父さん・・!」


「おめえだけが怒ってんじゃねえ、
一番辛えのは羚奈じゃねえのか?」


「・・・!」


悟空に言われてはっとする
羚奈を見てみれば噛みしめた唇からは血がでていた。
羚奈からふくれあがる異常な気。
普段の羚奈とは全然違う姿を見ながらどうして気づいてやれなかったんだろうと思った
なにもできず見ることしかできない悔しさに涙を流す羚奈。


「・・あいつ、殺してやる・・・!!」


「羚奈さん・・」


「お遊びはそこまでにしろ!
スポポビッチ!」


叫んだのはヤムーと言う男
静まりかえる会場。
ヤムーはスポポビッチの近くに寄った。


「われわれのするべきことはこんなことではないはずだ。
さっさと勝ってしまえ」


「あ・・ああ・・」


片足をもち、引きずらしてビーデルをリンクの外へだした。


「じょ、場外・・!
スポポビッチ選手の勝ちです・・・!」


コールされた瞬間すぐさま悟飯と羚奈はビーデルのもとへ駆け寄った。


「ビーデル!」


「ビ、ビーデルさんっ!」

「タ、タンカを呼びましょう!」


「いえ!
僕がはこびます!」


悟飯は軽々と横抱きした。その隣で涙ながらに必死にビーデルに呼び掛ける羚奈。


「ビーデル・・!
しっかり!!」


「スポポビッチ・・!」


去っていくスポポビッチの背に呼び掛ける。
振り向いたスポポビッチに


「許さないぞ貴様だけは・・・
分かったな!」


悟飯がそう言えば妖しく笑った。
その場から姿を消した2人
焦って戻れば途中でクリリンに悟空が仙豆をとりにいったと報告をうければ喜ぶ悟飯。


「仙豆・・?」


意味が分からない単語に羚奈は首を傾げた。
だが今はそんなこと気にしてる場合ではない。
早くビーデルを助けなければ。


「孫くんは早く医務室へ運んであげて!」


「羚奈さん!?」


医務室とは違うほうに走る羚奈。
羚奈は父のいる場所へと向かったのだ。
あんな口を聞いておいて自分が不利なときだけ手をかしてほしいなんて都合がいいのかもしれない。
だが今は頼る術がそれだけしかなかった。


「パパ・・!」


さっきの部屋へはいれば姿はどこにもなかった。


「・・なんで・・!」


サタンもいない
仕方なく羚奈は医務室へと急いで戻った。
部屋へはいればサタンと悟飯、それにさがしてた父の姿。


「羚奈さんビーデルさんはもう大丈夫だから」

「え・・?」


「じゃあ、みんな待ってるから!」


言うだけ言い、去っていく悟飯。
なにが大丈夫なんだろう?
父をよく見れば白衣に着替えていて。


「羚奈」


「パパ・・なんで?」


「医者が怪我人をほうっておけるわけないだろう?
羚奈のお友達だそうじゃないか
それなら尚更だ」


「・・・」


「だが、パパは必要なかったみたいだがな」


「え?」


「あの不思議な少年には感謝しなきゃいけないな」


「どういう意味・・?」


そんな話をしていれば勢い良く起き上がるビーデル。


「ちょ、ビーデルっ!?
起き上がっちゃ・・」


まじまじと不思議そうに自分の身体を見てたかと思えば立ち上がり、


「な・・
治ってる―――っ!!」


なんて嬉しそうに片手をあげて叫んだ。


「うそおっ!?」


あんなに酷い怪我だったのが治ってるではないか。
ビーデルに聞けば悟飯が食べさせてくれた豆のおかげだと言う。


「ちょ、ちょっ
ほんとに大丈夫なの!?」

肩につかみかかりがくがくと揺さ振って聞いてみる。

「落ち着きなさい!
そんなに心配するほどじゃないわよ!」


「・・・・・・」


いつものビーデルだ。


「よ、・・かった、
傷、のこっちゃったらどうしよっ、て・・・!!」


涙が止まらなくて上手く喋れない。
わんわんと泣き叫ぶ羚奈に呆れながらため息ついた。


「・・羚奈のパパもありがとうございました」

「いやいや、私はなにもしてないよ
少年のおかげだ
しかし、あの豆は興味深い・・・」


そりゃ一瞬であの酷い怪我をなおしてしまったのだからそうだろう。


「羚奈!
今度あの少年から聞いてきてくれないか!?」


子供のように目を輝かせて聞いてくる。


「・・・や、だけど


仕方ないなあ・・」


そんな2人を見て笑うビーデル。


「許さんぞ!ビーデル!
あんなめちゃめちゃ弱そうなやつ!」


「・・ビーデルパパはなにを言ってるの?」


「放っておいていいわ」


なにはともあれビーデルが無事でよかった。
悟飯には感謝だ。


「羚奈」


「なに?」


「パパはさっきの少年と付き合っても構わないからな」


「・・・・・!?
孫くんとはそんなんじゃないよ!」


「照れない、照れない!」

「・・・・・・」


ちょっとだけパパが苦手になりそう、です。