ちゅってしてダーリン! | ナノ


←back
「ビーデル!ビーデル!」

歓声とともに聞こえてきたビーデルコール。
しっかりと聞こえてくる。

「・・そ、か
次、ビーデル・・・
応援行かなきゃ」


重たい足をひきずらせながら歩く羚奈。

さっきのことは忘れなきゃ
今は目の前のことに集中しよう!


「す、すごい人気なんだね
頑張って、ビーデルさん」

「うん!」


すぐに戻ってみればビーデルがリンクへあがるとこだった。


「ビーデル!」


「羚奈!
あんた今までどこ行って・・・!」


ビーデルの名を呼び彼女のとこまで駆け寄る。
そのまま抱きついた。


「ちょ、羚奈?」


「・・・」


ぎゅうううっとかなりの力で抱きしめる羚奈を不思議に思う。


「えへへっ
充電完了!」


そうはにかんで笑い、ビーデルから離れた。
だけどその笑顔は無理してるものだとすぐに分かった
羚奈の右頬をむぎゅっとつねる。


「いた――!!」


「ビーデルさんっ!?」


悟飯だけではなく周りにいるものたちも驚いている。

「無理して笑うんじゃないわよ!」


「・・・!
べ、別に無理してるわけじゃ・・」


「何年幼なじみやってると思ってんの?
無理してるのバレバレなのよ!」


「〜〜〜・・・!」


なんで、と言いたそうに開いた口がふさがらないでいる。
悟飯は思った。
前に羚奈に自分が嘘をつくのが下手だと言われた。
だが、それは羚奈も同じだと言うことに。


「・・はは」


おもわず笑ってしまった。

「・・そ、孫くんまで・・
笑うなんて酷い!」


「・・・っ、
すみ、ません・・つい、」

「つい、じゃないよ」


ふてくされる彼女を可愛い、なんて思ってしまう
ビーデルとは違うこの感情
僕は一体どうしてしまったんだろう?


「私行くわ」


「あっ、ビーデル・・!」

「なに?」


「勝ってね!」


ビーデルは目をまるくする
だけどすぐに強気な目で笑った


「あたりまえよ!」


そしてビーデルはリンクへとあがっていった。
ビーデルを見送れば羚奈はずるずるとその場に座りこむ。


「羚奈さん!?」


「ごめ・・力ぬけちゃって・・・」


「大丈夫ですか?」


「うん」


悟飯の手に支えられてなんとか起き上がる。


「言えてよかったあ・・!」


安心して笑顔を見せる羚奈に悟飯はまた胸が高鳴った。
どきん、どきん、
自分の心臓なのにうるさい

「孫くんにもずっと言いたかったの、頑張ってって!」


「あ、ありがとう、ございます・・」


なんかダメかもしれない。

(あれ・・
どうやって接してたっけ)

おかしい
羚奈のことが上手く見れない。
自分はどんな顔をしている?


「孫くん?」


「えっ・・」


名前を呼ばれて俯かせてた顔をあげればすぐ目の前に羚奈の顔があった。
こつん、と額をあわせる。

「ん――、熱はないみたいだけど」


「・・・・・!!!」


一気に顔全体に熱が集中する。



「うわわわ・・!
だっ!大丈夫です!!」


慌てて羚奈を自分からはなした。
羚奈を見れば驚いた顔をしている。
重たい空気が流れた。


(・・なんか気に障ることしちゃったのかな?)


(はあ・・
心配してくれてるのに今の態度はよくなかったな・・)


「おーい、お二人さん
試合はじまるよ!」


「「・・・・・・!!」」

びく―――!、と2人して反応する。
リンクを見れば言われた通り、始め!の合図。
なぜだかスポポビッチと目があってしまった。
あったというより見られている。


「なんだ、あいつ
また羚奈のこと見てんなあ
・・」


「孫くんパパ!」


後ろからひょっこり顔を覗かせる悟空。


「お父さん・・また、と言うのは・・・?」


「あぁ、アイツくじ引きんときも羚奈のこと見てたんだ!」


「ちょっと気持ち悪い・・」


羚奈が呟いたこのセリフ。
ビーデルも同じことを思っていたのだった。


「あの・・ピッコロさん負けちゃったんですか?」


「いや、ピッコロは棄権しちまったんだ」


「・・そうなんですか」


ちらっとピッコロの方を見ればシンと話をしていた。一瞬だけ驚いた顔をして固まっている。
なにがあったのだろうか。悟空もそっちへ行ってしまった。
試合をみようとリンクへ視線をやればビーデルの技がつぎつぎと決まっていた。
だが少し息がきれはじめてる。
なんど倒しても立ち上がってくるスポポビッチのタフさにはびっくりだ。


「しつっこいなあ・・!」

走り迫ってくるスポポビッチの顔面へと跳び蹴りを食らわす。
そのまま肘を使い、顎へ。
みぞに何発か打ち込む。


「やあっ!!」


ラストは左膝での蹴り。
これで決まった。
誰もがそう思った。


「はっ、はっ、はっ」


乱れた息を整えるビーデル
目の前で倒れていたスポポビッチがまた立ち上がる。血をながしながら妖しげな笑みを零すスポポビッチは羚奈の脳内に危険だとおくられる。
悟飯も終わったと思ったのか立ち上がるスポポビッチに不信な声をあげた。


「そ・・そんな・・・!」

「試合を棄権したほうがいい・・・!
あいつなにか変だぞ・・!」


「ビーデル・・!」


悟空の言葉に不安な気持ちになる。

無事に帰ってきて、と強く祈った。