←back
ビーデルパパの部屋へ向かう長い廊下を歩いていれば始まりのアナウンスが響く声が聞こえた。
それはつまり、孫くんやビーデルの試合が始まってしまうわけで
でもまずはクリリンさんからだし、素早く用事を終わらせて戻れば平気だろう。
羚奈は歩く足を速め、目的場所へと向かった。
一呼吸おいて、数回ノックする
扉が開けばビーデルパパが出迎えてくれた
「羚奈ちゃんじゃないか!」
「こんにちは
・・パパがこちらに来てると伺ったのですが」
「羚奈」
すごく久しぶりに聞いた声に顔をあげればカツン、と床を鳴らしスーツを着た男性・・もとい羚奈のお父さんがたっていた。
「・・パパ、」
ぎゅっと抱きしめられる
「羚奈、久しぶりだな
会いたかっ「やめてよ」」
羚奈の低い否定の声に目を丸くし、視線をやる
「今さらなにしに来たの!
幼い私やママを捨てたくせに!!」
「・・パパは他国の可哀想な子供たちを救いに行ったんだ
羚奈だって分かってくれてるはずだろう?」
「嘘・・っ!
ママのお金が目当てだったくせに!!
パパのせいでママがどれだけ傷ついて、私がどんなに寂しい思いをしたか知らないくせに!!」
パパが立派なお医者様で人々の役にたってること、頑張ってることは知ってる。でもそれと同じくらい私やママも大事にしてほしかった。
「・・だったら、」
「ん?」
か細い声をなんとか絞りだす。
「どうして私やママを数年間もほったらかしにしたの?」
ぽたり、ぽたりと羚奈の潤んだ瞳から涙があふれでた。
「羚奈」
名前を呼ばれるが顔を見せたくなくて、敢えて反応はしない。
だが懲りずに何度も名前を呼ばれ、それに苛立つ。
「〜〜〜っ!
もう なに・・!?」
「おいで」
そこには両腕を大きく広げて、優しく笑う父の姿があった。
そんな姿になにを企んでいるのかと、疑う目をむけてる羚奈。
「なんの冗談・・?」
「ん?
寂しい思いをさせたならこれからいっぱい甘えていいんだぞ・・・ってこと!」
「・・・!?」
腕を引っ張られて無理矢理抱きしめられる。
続けて頭を撫でられた。
「ごめんな 羚奈
ずっと寂しい思いをさせて
お父さんはもうどこにもいかないからな」
「・・・・・」
なにを今更
羚奈は父の身体を思いきり後ろへと追いやった
「・・そんなこと言われても信用できないしっ、許せない!」
叫び、部屋から飛びだした
自分の身体からこんなにも大きな声がだせるとは思わなかった。
ビーデルパパも驚いてる。ほんとは嬉しかった。
パパに会えて、抱きしめてもらえて。
でも、今まで甘えられなかったぶんどうやって"パパ"に甘えたらいいか分からない。
パパがいなくなってから働きっぱなしのママに負担をかけたくなくて、迷惑かけたくなくて、強いこにならなきゃって、必死に自分に言い聞かせた。
ママが弱いぶん、私がしっかりしてママを守るんだって。
せっかくパパが家に戻ってきてママが笑顔になるかもしれなかったのに。
私が壊しちゃったんだ。
「・・、全然だめだなあ」
身体が動かなくて暫くその場から動けなかった。