ちゅってしてダーリン! | ナノ


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・・どうしよう
やることがなくてかなり暇なんですけど

相変わらず悟飯とビーデルは舞空術の特訓に夢中になっている。
気がつけばそこらへんの花や草をつかって冠などをつくってしまうほど暇していた。
15分たらずで完成した冠。それを悟天はきらきらした瞳で見ていた。


「おねえちゃん、すごい!」


「ほんと?ありがと
嬉しかったからこれは悟天くんにあげちゃう!」


ぱさり、と冠を悟天の頭にのせてあげればすごい喜んでくれて。
やっぱり子供っていいなぁなんて思ってしまう。
冠をつけたまま悟天くんは蝶々を追いかけに行ってしまった。
それを少しばかり眺めて草の上へと体を後ろに倒れこむ。


(・・そりゃ私が勝手についてきただけなんだけど)

見上げれば空が澄んだように綺麗。
風も気持ち良いし、いいところに住んでるなと思う。
この辺りを散策がてら散歩しよう!そう決めて、体をおこして歩き始めた。
2人の方に視線をやれば


「みてよほら!
ずいぶん浮くようになったわ!」


「いいよいいよ!
もうバッチリだ!」


なんてたわいもない会話をしながら盛り上がっている
また、胸がきゅんってなった。

ぐるぐるぐるぐる、

なにかが胸のなかを支配する。
すっぽりとのみこまれてしまいそうだ。


「ビーデルといるときの孫くんはいきいきしてるね」


これ以上大切な幼なじみと友達を嫌に思いたくなくてその場から離れた。





++++++++


「ねぇ、あれぐらい飛べるまで何日かかるかしら・・」


「え?」


自由に飛び回る悟天を見てビーデルは問い掛けた。
自分は浮くだけで精一杯なものだから羨ましい。


「さ、さぁ・・
どうかな・・
わからないけど・・」


「それまではここに通わせてもらうつもりよ」


曖昧な返事をする悟飯にビーデルはずばっと言いきった。
このままじゃさすがに特訓ができなくなってしまう。
なんとかせねば。

悟飯は悟天にビーデルがいるときはこれ以上早く飛ぶな、と訴える。


「なぁに?」


「あ、いえ
ちょっとアドバイスを・・」


「そう」


少し疲れてきたので休憩をとることにした。


「ふう・・
ちょっと休憩
・・どうしたの?悟飯くん」


「いえ、羚奈さんの姿が見当たらなくて」


先程までいた羚奈がいなくて少々不安になる。

「あの子今朝から様子おかしかったから・・
なにもなければいいんだけど」


「・・・すみません、
ビーデルさん
僕少しの間抜けますね!」

「え・・!?
ご、悟飯くん!?」


ビーデルの聞いた言葉に血相を変えて飛びだした。
空に吸い込まれて消えていく悟飯を眺めながらぽつり、呟く。


「なんで・・
行かないでよ」


それは誰にも聞かれることのない、ビーデルの本音だった





++++++++


質問です。

私は散歩してたはずなのになぜ崖から落ちそうになってるんでしょうか・・?
珍しい花が見えたから気になっただけなのに
自慢じゃないけど力ないんです、私!!
今にも滑り落ちそうな手を踏張っている。
だけど限界に近かった。


(私が嫌な子だから罰があたったのかな・・?)


じんわり、目頭に熱いものが込み上げてきて、涙をうかべる。

助けて・・誰か、


ビーデル・・・
悟天くん・・・っ


限界だった手は離れ、
力なく落ちていく。

必死になって名前を呼んだ
届くことはないのだろう、と思いながらがむしゃらに叫んだ。
落下速度はましていくばかり


「・・・っ!
孫くん・・!!」


そう叫んだ直後、がしっと自分の腕を捕まれる感覚と共に落ちる感覚はぴたりと止んだ。


「・・・ふう、
呼びましたか?羚奈さん」


「・・孫、く・・・?」


羚奈を横抱きしながらふわふわと宙に浮き、笑顔を浮かべる悟飯。

来ることはないと思ってた

「ほんと羚奈さんは危なっかしいですね」


「・・・なんでここが?」

「気を探ったんです
やっぱこうゆう時は便利ですよね」


どうしよう
すごく嬉しい

悟飯の胸元の服をつかみ、顔を埋めた。


「孫くんはヒーローだよ」

「・・え」


羚奈の言葉に顔が真っ赤になる


「な、なななっ
なに言って・・・!」


慌てふためく姿がなんとも可愛い。
思わず笑ってしまった。


「やっぱり笑顔が一番素敵ですよ」


「・・・!」


心配してくれてたんだろうか?

・・やっぱ優しいなぁ。


今日はちょっとだけ、
・・ほんのちょっとだけ孫くんに対する違う気持ちが芽生えた気がする。

時間がかかってもいいからこの気持ちだけは大切にしていこう。


本気でそう思った。