「奈津子が死肉祭にでるだと!?」
「あらやだ、彼氏のくせに彼女からなにも聞かされなかったのお?
急遽出場が決まったそうよ」
「・・っくそ!」
からかいながら言うチョップリン。
身を翻し部屋の扉をあければ小さな悲鳴が聞こえた。
「千地!?なによもう!
急に開けないで!」
「・・・」
至っていつも通り。
じっと見つめてくる千地に口を尖らせて"なんなのよ"なんて言ってくる。
「話がある」
そう言えば奈津子の表情が少し変わった。
この言葉に嫌な予感しかしなくて。
「なんで俺に隠してた」
ほら。きた。
「・・別に隠してたわけじゃないわ」
千地の横をすり抜けようとすれば肩を捕まれた。力まかせに千地の方へ向かされる。 痛かった。
「・・っ、い、た・・!」
「俺はっお前には隠し事はなにひとつしてないはずだ!なのにテメエは・・!」
「千地だって全てを話してくれてるって思ってない」
「・・・ッ!?」
ああ、もう。
喧嘩なんてしたくないのに
「それより、私が死肉祭にでること誰から聞いたの?」
「チョップリン」
「アイツ・・!」
あれほど言うなって言ったのに。
千地になんか言ったらこうなるって分かってたし。
なんで私の決心を鈍らせるようなこと言うの・・!
「だから何!?」
「奈津子・・?」
奈津子は千地を睨み付ける。千地はそんな姿に驚いた。今までこんな目で自分を見たことはなかった。
目の前にいるのは奈津子なのに奈津子じゃない。
「お前・・」
「・・ッ
千地言ったよね?
"これは千地清正の喧嘩だ
手をだすなって"
私も同じ。これは琶畝奈津子の喧嘩よ!手をださないで!」
なぜだか何も言えなくなった。これ以上言えばなぜだか目の前にいるこいつが泣いてしまうと思ったから。瞳がゆらゆらと揺れていたからだ。
「・・私、もう行かなきゃ」
ぱしんっ、と千地の手を払いのける。
ふらつく足取りで死肉祭の会場へと向かう奈津子の背にかけられた千地の言葉。
「死んだら許さねえ」
振り向いて抱きつきたかった。
私は大丈夫よ、って言いたかった。
着くと同時に奈津子の目から大粒の涙が零れおちた。
我ながら情けない。
あんな言葉一つかけられたくらいで"でたくない"って思ってしまうなんて。
「ははっ・・
千地の前で泣かなくてよかった・・」
言ったら弱音をはいてしまいそうだったから。
千地を守るためにこの試合は受けたんだ。
だから。こんな痛み、大丈夫。
私は千地が生きてくれてればいい。
「よォ。新世界のカミサマ。」
「・・?」
「コード名"ミューズ"
今からの試合が楽しみだ」
「お手やわらかにお願いしますわ」
涙をふき、振り向きざまににっこり笑って差し出した手。受け入れられるとは思ってなかったけど。
「は・・
お手やわらかに?
"女神"さんにはいらねえだろ。」
「・・暴言だこと。」
「あとその喋り方なんとかならねえ?」
「・・別に意識してないからなあ。千地のためにもアンタはぶっ潰す。」
「・・そうこなくっちゃ」
ペーパーナイフをとりだし切り付ける。
相手も腕をさしだしてくるから同じように切り付けた。
"今宵の死肉祭!
いよいよ始まるゼ"
タイトル/カカリア