dc | ナノ





昨日の出来事を阿笠博士に相談しにいったら俺と出会った当日にはもう正体がバレていたのだということを知らされた。
勘がいいとこは血すじだと博士は笑う。


「教えてあげたらどうじゃ?
君が新一だって」


博士がそう言えばコナンは顔色を変えて怒鳴った。


「バーロォ!
そんなことできっかよ!」


「じゃが陽莉くんはそれを望んでおるのじゃろう?」


「アイツだけは危ないめにあわせたくねーんだよ・・・!」


前髪をくしゃくしゃとやり深いため息をはく。


「陽莉くんは強い子じゃよ
新一が思ってるより、ずっと」


「・・・、わーってる」


それでもこんな姿じゃ守れないから。


「それにしても素直な陽莉くんがあんなに必死に新一だと知りたいのには訳があるんじゃないかの?」


「そーいや陽莉のやつでかける日もその前も何の日かってやたらしつこく聞いてきたな」


目にはいってきたのはカレンダー。

コナンの動きがぴたりと止まる。

まさかあいつー・・





「お兄ちゃんのバカヤローッ
一人で食べたって美味しくないんだよ」


その頃陽莉は新一と一緒にたべようと買ったホールのケーキを一人でやけ食いしていた。
ケーキを見るたびに胸が苦しくなる。

お兄ちゃん

お兄ちゃん


「あそこまではっきり言われちゃったらあれ以上聞けないじゃない・・!」


ピンポーン


玄関の呼び鈴がなる。
涙を拭い、扉をあけた。

そこにはコナンがたっていたから目をぱちくりさせる

「・・おにい、
コナンくん」


「こんにちは!
陽莉ねえちゃん!」

いたって普通なコナンに若干いらっとした。

なんでそんな普通なのよ、バカヤロ―!
本日二度目のバカ発言。


「新一にいちゃんの本読ませてもらっていーい?」


「え・・、
いい、けど
コナンくんには難しいんじゃないかな?」


なにそのわざとらしい台詞
素直にあがりたいって言えばいいのに。


表情は笑顔なのに心は腹黒い陽莉。
ふと思った。
コナンが来た理由はなんにせよ陽莉にとっては嬉しいことだ。


「そうだ!
コナンくん、ケーキ好き?よければあがって食べてって。」



うまいことコナンを家にあがるよう誘う。

コナンにとっては久しぶりの自宅。
通された部屋へはいり机をみればハッピーバースデーの文字。


「陽莉ねえちゃん、もしかして誕生日・・?」

「もしかしなくても誕生日!
お兄ちゃんがいなくなった日。」


「・・・っ」


バカだ、俺は。
蘭とでかけることで頭いっぱいで一番大事なことを忘れていたなんて。



「ほんとはお兄ちゃんと一緒に、って買ってあったんだけど
・・・っ、帰ってこない、か、ら・・・!」


ぼたぼたと涙がおちる。


私はあれから涙脆くなってしまった。
お兄ちゃんは目の前にいるのに存在すら否定されて、名前も呼ぶことさえ許されない。


「一人じゃ食べきれない・・・っ」


「陽莉ねえちゃん
・・・」


わんわん、わんわん。
まるで小さい子供が泣くように。
陽莉のなかでたまってたなにかがはじけとんだ
もういろいろと限界だ。


怖い
寂しい。
不安。
絶望。


「ひとりは嫌・・っ」


「・・陽莉」


「怖い思いしてもいいから・・
お兄ちゃんと一緒にいさせて・・他人にしないで」


「陽莉」


震えながらコナンを抱きしめる陽莉。
その姿にコナンは顔を俯かせ、曇らせた。


・・もう限界、か。



「しゃーねーなあ・・」


「・・コナンくん?」


「お兄ちゃん、って呼んでくれないのかよ?
陽莉」


そう言ってコナンは笑いメガネをとる。
小さい頃の兄そのものだった。


「陽莉?」


「・・っ
散々勝手なことばかり言って!
素直に呼んでなんかあげないんだから!
大体・・」


分かったとたんこの態度のかわりようの早さ。
渇いた笑いをもらすコナン

「さっさとケーキ食べよーぜ!」


「あ、・・う、うん・・」

「ハッピーバースデー、
陽莉」


「・・・ありがと

ねえ、お兄ちゃん」


「ん?」


「二人きりのときはお兄ちゃん、って呼んでもいいかなあ?」


「え、」


一瞬、コナンの瞳が見開かれた。
だけどすぐいつも見ていた生意気そうな顔になる。


「昨日の返事、聞かせてくれる?」


「二人のときだけ、な」


そう言うコナンの頬は赤く染まっていて。
陽莉はくすくすと笑う。


「なんだよ」


「なんでもなあーい」


幸せな時間。
久しぶりの陽莉の笑顔にほっとするコナンだった。


「おかえりなさい
お兄ちゃん」


陽莉はコナンに力強く飛びついた。





「・・ただいま」